まったり屋の小説広場

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私を「スキーに連れてって」の時代に連れてって 第5章 父の真相

バブルの時代が、本当に幸せな時代だったのかを問い直す小説。

まずは序章から第4章をお読み下さい。

「おい、またお前たちか、危ねえな」
とうずくまる雪子と涼子を目の前にして、純平が言った。
「大丈夫?」と雪子。
「ああ、それよりもこの娘は大丈夫なのか、危なっかしいな」
 涼子は、何も言わず押し黙っていた。自分の今、しようとしたことに恐ろしさを感じ、体がかたまった状態だ。
「ま、しっかりしろよな」
と純平。ぶっきらぼうにその場を去る。スキーで降りていくが、しばらくしてバランスを崩しこける。そして、立ち上がり、また、こける。何だか見ていて吹き出しそうな光景だが、涼子と雪子は、そんな純平の姿をぼおっと眺めいてた。
「全く、どういうつもり、また、転げ落ちるつもりだったの? 一人にしておくと何するか分からないわね。私が後から来なかったら、あの人も巻き込んで崖から転落よ」
と雪子が怒って言った。涼子は小声で「ごめんなさい」と言い返した。
「さあ、今日はスキーはお終いね。さっさとホテルに戻りなさい」
と呆れた雪子が言った。二人で中級コースを滑り降りた。雪子は、これからレッスンがあるので、そのままスキー場に残ることになった。涼子はホテルに戻った。

 夜遅く、涼子は仕事が終わり従業員用の住み込み部屋に戻った。その日は、倉庫の整理や調理室での皿洗いなどで客と顔を会わすことなく過ごせたため、純平と顔をまた会わすことはなかった。だが、気分は落ち込んでいた。自分が人殺しまでしようとした、それも、実の父親を。自分が生まれる前の父親だから、自分の存在までも否定するつもりで成し得た凶行だった。そんなに父を憎んでいたのだろうか。そんな自分が情けなかった。
 部屋には雪子がいた。御茶を飲んでテレビを観ていたが、涼子が入ってくると、ぎょろりとにらみつけた。お昼のことが、まだしこりになっているようだ。
「スキー場でのことはごめんなさい。わたし、つい無理しちゃって」
と涼子は弁解がましく言った。何とか雰囲気を変えたかった。
「思ったんだけど、あなたあの人を殺そうとしたんじゃない?」
「え?」と突然の問いかけに涼子はぎょっとした。
「何を言っているの? そんなことするわけないじゃない」と慌てて否定した。
「でも、私があの場で見た限り、あなたはあの人に突進していったわ。確か、磯崎純平っていう中日物産の人。どう考えても変。あなたは記憶喪失だなんて言っているけど、本当は何か隠しているんじゃないの? 昨日、ホテルに来て、訳の分からないこと言って、あの人の部屋に駆け込んだわ。あの人がいることを知っていて駆け込んだんじゃないの? それで突然、腰を抜かして、あの人に診療所まで運んで貰うようにした。あの人と何か関わり合いがあるんじゃないの? もしかして昔の女とか、恨みがあって復讐をしようとしてあんなことを」
「とんでもない!」
と涼子は叫び声をあげた。どうしてそんなことになるの、と心の中で叫んだ。あまりに大声だったので、雪子はおののいて涼子をみつめた。
 しばらく沈黙して、気が落ち着いたのか雪子が涼子に言った。
「まあ、何でもないんならいいけどさ、たださ、あの人と関係なんてないというのならお願いがあるの」
と思わぬ返答に、今度は涼子が驚いた。涼子は自分の殺意を見抜かれた上、とんでもない誤解に発展したのが仰天だった。
「お願いって何?」
「恋のキューピットになって欲しいの」
「キューピットって、誰の?」
「分かるでしょう」
「純平さんと雪子さんの」
「そうよ」
「え、どうして?」
「狙っているからよ」
とにたりと笑って雪子が言った。涼子はどきっとした。母が自分に父とくっつくようにお願いしている。娘をキューピット役に。だけど変だ。母はどうして父に惚れ込んだのか。そもそもスキー場でかっこく滑る父の姿に惚れてという馴れ初め話しは嘘だった。
「なぜ、あの人がいいの?」
と涼子は興味津々になって訊いた。
「うーん、私さ、商社マンと結婚することが夢なの。この仕事も、そんな夢を実現したくて選んだの。一流商社の社員旅行なんて絶好の機会じゃない。だからさ、折角出会いがあって、それなりに知り合えたんなら、そのチャンスを逃す手はないじゃない。何だか悪い人じゃなさそうだし、あなたも分かるでしょう。診療所まで担ぎ込んでくれて、今日もあんな目にあっても態度に大人げがあったわ」
と雪子が嬉しそうに言う。涼子は思った。母は商社マンだから父を選んだんだ。
 何とも情けなく思った。でも、この際、断りづらい。できることならしなければいけないのだろう。考えてみれば父と母がくっつかない限り自分は生まれてこなかったんだから。
 

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テーマ:SF(少し不思議)自作小説 - ジャンル:小説・文学

平和教訓小説「平和という名の付く船」 第6章 データボックス

平和をモットーに世界一周航海をする船が、自衛隊の護衛を受けることに。次々と迫り来るハプニング。その時、乗客たちは!?

まずは、第1章から第5章までお読み下さい。

タツミは緊張した面持ちで、操縦桿を握っていた。自衛隊の到着が間に合うか。とりあえず、その前にこの船をできるだけ自衛隊のいる位置に近付かせようと思った。お互いが接点となる方向へ舵を回す。護衛艦では間に合わないだろう。だが、ヘリなら何とかなるかもしれない。

海賊、いや、ただの海賊ではない、きっと国際的な窃盗密売組織に違いない。我が国の国宝を盗み、それをどこかの国に売り払おうとしているのだ。許されることではない。なぜか、かつての心が甦ってくる。国を守ろうとする気持ち。

どうしたらいいのだろう。敵の船が現れたら。この船では太刀打ちできない。武器はまともなのがない。軍艦ではないので、大砲とか機関砲があるわけではない。せいぜいできて体当たりぐらいだ。体当たり? 

そんなことをしていいのか。同じことを数年前に考えさせられた。それは、アデン湾ではなく、東シナ海であった。こんな旅客船ではなく、大砲と機関砲のある船で、操縦桿を握っていた。それも艦長が持ち場を離れたときに、やも得ず自分が操縦の一手を担っていたときに。日本国領土の三角島を自国の領土だと主張する隣国の活動家の上陸を阻止するため艦を操縦していた。上からの命令は「もめごとを起こさず、対処しろ」であった。

だが、相手の船は容赦しなかった。武器こそ持っていなかったが、モーターボートには10人ほど人が乗っていて、是が非でも島に上陸するつもりであった。何とか阻止しようと、接近したりして妨害しようとしたが、相手は、小回りのよさを活かしてかわし、突き進もうとする。

ついには、艦の手が届かないところまで離れ、そして、上陸阻止できる浅瀬前ぎりぎりのラインまで来ていた。どうしたらいいのか、海上自衛官航海士として決断しなければいけなかった。領土侵犯を許してはならない。国土を守るのが自分の務めだ。常にそういい聞かされていた。だから、突き進んだ。そして、モーターボートは・・・

あ、モーターボートが見えた。左前方向だ。あの時よりも大きめで装備がしっかりしている。予想通り単なる海賊ではない。乗っている連中はバズーカ砲を含め武器を持っている。かなり手強い。よし、それならば、あの時と同様に突き進むぞ。今度は迷いがない。速度を上げ、モーターボートに対し、船の左舷側面をぶつけようとした。それくらいしかこっちの対抗できる武器はない。だが、相手はさらりとかわす。そして、持っているバズーカ砲を自分のいる操縦室に向けて狙いをつける。

やばい、と思いタツミは身を伏せた。突然、ドカーン、という音が響き、窓ガラスが割れ、火花が散った。室内に火が広がった。タツミは消化器を出して、急いで火を消した。何とか消し去ったが、操縦室は機能停止、船は緊急停止状態になった。

これではかなわない。米兵から取り上げた機関銃を持って、甲板に向かった。使い方は、今でも覚えている。この際、こうやって戦うしかない。相手が甲板に乗り込む前か、乗り込んだとしても、船内に入る前に阻止するのだ。

甲板には、田之上もいた。同じく機関銃を持っている。モーターボートの奴らに機関銃を向ける。だが、相手側も機関銃を持っている。数段、パワーのある機関銃だ。そして、バズーカも。これでは、2人が撃ったとしても、すぐに撃ち返され蜂の巣にされてしまう。

と、その時、上空から轟音が。あ、ヘリコプターだ。それも日の丸がついている。やったぞ。モーターボートの連中もヘリコプターを見上げる。バズーカ砲を持つ男が、ヘリに狙いをつける。と、そのとたん、バババ、とヘリから機関砲が放たれる。一気に、モーターボートの連中は撃ち砕かれ、そして、ボートも同様に。一気に乗っている奴らを呑み込み海中に沈んでいった。

「やった、助かったわ」と背後で声がした。タツミが振り向くと、そこにはワールド・ピース副代表のミナがいた。彼女は、恐ろしく嬉しそうだ。目の前でボートに乗った連中が血飛沫をあげのたまう光景を見ていながら、それで助かったんだという思い出一杯のようだ。ホールでの命拾いの体験の反動か。9条護持、絶対平和主義者の面影が一挙に吹き飛んだ姿だ。

その後に、ミクが現れた。相変わらずのゴスロリ・スタイル。顔は憎しみで一杯だ。そして、「ひどい、人殺しだわ、自衛隊なんて悪魔だわ」と怒り心頭だ。あまりにも残酷な光景を見せられ衝撃を受けたようだ。そして、その後ろにゴンゾウが。
「全くそうだな、こりゃひどすぎるぜ。何もあんなにまでしなくてもよう」と平然と言う。

タツミと田之上は、彼らの様子に呆れてしまった。衛星電話で護衛艦に連絡を取った。もうすぐ、この船のいるところまで到達する見込みだと。

とりあえず一安心だ。船がこんな状態になってはツアーはここで中止だ。会社にもさぞ大きな損害が出よう。それは何とか保険で賄えるかもしれないが、自衛艦に、この船が助けられたという事実が世に広く知れ渡ることの方がはるかに大きな損失になる。この平和団体の存続意義が問われる結果に。

田之上が、タツミを倉庫室に誘う。一体どうしたのかというと、どうしても米兵たちのことで腑に落ちないことがあるので、もう一度、あのコンテナを確かめたいとのことだった。

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「私を「スキーに連れてって」の時代に連れてって」 第3章 1989年3月 

バブルの時代が、本当に幸せな時代だったのかを問い直す小説。

まずは序章第2章をお読み下さい。

「ちょっと、大丈夫?」
という女性の声で涼子は、はっと目を覚ました。気を失っていたわけではないが、転げ落ちて、その衝撃でぼおっとしていたのだ。特に怪我もない。痛いところもない。片足にスキー板をつけたまま横たわっている状態だ。よし、と思い起きあがった。
 起きあがり、板をつけた片足を引きずりながらゆっくりと転げ落ちた坂を上った。ああ、死ぬかと思った、と涼子は無事な自分にほっとした。
 赤色の柵ネットのところに白いスキーウェアを着た女性が立っていた。涼子は、その女性を見上げた。はっとした。何とも見覚えがあるような、「お母さん」と声を上げようとしたが、喉元でそれをとめた。
 母の雪子に似ているが、涼子の知っている雪子よりずっと若々しく、髪の毛は肩の下まで伸びるほど長い。年齢的にいえば二十代前半だ。
「怪我はない? 大丈夫?」
とその母似の女性は言う。その女性は、胸元にネームプレートを着けていた。「志賀高原スキー場公認インストラクター 松本雪子」と書かれている。涼子は、はっとした。松本は母の旧姓だ。というか父との離婚後、その姓に戻っているが。単なる偶然か。
「大丈夫です」
と涼子はとりあえず答えた。
「そう、よかった。だけど、片方の板は、それにストックは?」
と松本雪子に言われ、
「それは、どこかに?」
と涼子は言いながら、辺りを見渡すが、転げ落ちたときに放したストック二本と外れた片方のスキー板は見当たらない。どこにも落ちてないのだ。
「ここで外しちゃったのよね? あなたが落ちたところを見た訳じゃないけど、そのはずよね?」
と松本雪子。
「ええ、そのはずです。だから、この辺にあるはずでは」
と涼子は改めて見渡すが、周囲十メートル四方に板やストックは全く見つからない。
「あら、あなたのつけているスキー板って、変な形ね。改造ものなの?」
と雪子が、涼子の板を見ながら言う。
 涼子は、えっと思った。いわゆるカービングスキーだ。そんなに新しいものでもないはず、インストラクターがそんなことに驚くとは不可思議だ。
 だが、雪子は初めて、それを見るように真剣に見つめる。涼子は、雪子の履いているスキー板を見た。その板は、映画「私をスキーに連れてって」で見たような先がとんがって、反り上がっているような形。現代では主流ではない板だ。インストラクターだから、そんな板を履くのか、と不思議に思った。
 すると、二人のいるところに、スノーモービルが近付いて来た。中年の男性が乗っていた。
「どうしたんだ?」
と男。
「ああ、キャプテン、この子が改造もののスキー板を履いていて、ストックと片方の板をなくしたようなんです」
 インストラクターたちのリーダーの男は、涼子のスキー板を見る。
「何だ、これ? これってもしかして、スノーボードとかいうのじゃないのか」
「スノーボードだと、もっと大きくて幅が広くて付け方も違うんでは」
と雪子が言うと
「うーん、だが、スノーボードに似て非なるもの。とはいえ、通常のスキー板ではない。とにかく、ここでは、こんな板は滑走禁止だ。悪いが、すぐに退場してまともなのに履き替えるかしてくれ」
とキャプテンは言った。
「そうね。分かった? あなたは規則違反の板をつけているわ。他のお客さんに迷惑よ」
 雪子は、涼子を少し睨んで言う。
「え、悪いんですけど、この板はホテルでレンタルしたものですよ」
と涼子は言い返す。
「ホテルでレンタル? え、そんなものをレンタルなんてしているはずないわ」
「いえ、しているんです。今朝、借りてきたばかりですよ」
と涼子。突然、ふっかけられた苦情に仰天し、むかっとした。
「変よ。どこのホテル?」
「この下の志賀高原温泉ホテルです」
「あら、私が今、滞在しているところよ。今は、そこのホテルのお客さんを主に指導しているの。あなたもお客さんってこと?」
と雪子が言うと
「そうだけど」
と涼子は答えた。
「ふうん、それらしくないわね」
と何とも意味深な言葉を雪子は口ずさむ。
「おい、とにかく、このまま滑って貰っては困る。とりあえず、麓に降りてくれ」
とキャプテン。
 腑に落ちない気分で涼子は、キャプテンの後ろに乗せられ、スノーモービルで下まで降ろされることになった。雪子はスキーで平行してさっと滑り降りる。
 涼子は、雪子の滑りを見て驚いた。楽々と上級者コースの急な傾斜角を降りていく。プロ並みの滑りだ。顔を見ると、母、雪子が若返ったような顔。それに背格好も似ている。涼子の知っている母は、病気でかなりやつれているが、若くて健康だったら、こんな外見だったと思われる姿だ。
 だけど、母のはずではない。旧姓と名前が同じだが、若返ってこんなところにまで来て、こんなにうまくスキーが滑れるはずがない。
 麓に着いた。とりあえず、周囲を見渡す。何だか様子が変だと思った。そんなに変わってないはずなのだが、何かが変わっているというような雰囲気が漂う。
 リフト乗り場を見ると、かなり多くの人が並んでいる。もう時間が経ったからなのだろうか。ふと、そのスキーヤーたちのスキー板を見ると、皆、雪子がつけているような旧式のスキー板をつけている。カービングスキーやスノーボーダーは見当たらない。
 変なの、ホテルの係りの人は、今はカービングスキーが主流だと言っていたのに、実際は違うじゃないか。
 志賀高原温泉ホテルの前にスノーモービルが着く。涼子は降りて、とりあえずスキー板を外した。雪子もスキー板を外す。
「さ、行きましょう。お客様」
とからかうような感じで涼子に言う。雪子についていくようにホテルに入る。

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社会教訓小説「日の丸に死す」 第3章 特殊部隊入隊

帰属意識を「国家」に求めた男の運命とは!

まずは、はじめにから第2章をお読み下さい。


逮捕され、留置所に押し込められて数日後、愛国党の弁護士らしき人物が民雄に面会しに来た。

弁護士の話では、民雄が街宣車で引いた人達には幸い死者は出なかったが、4名ほど重軽傷を負っているため、傷害罪が適用されるのが相当だが、実をいうと、不起訴の上、事件そのものをうまく揉み消して貰えるという。
「あの連中は、反日的なごろつきだ。あんな目に遭っても当然だろうと我々は思っている。しかし、参議院選挙も近くてな、愛国党としては、今度のことは思いっきり悪い影響を与える。だがな、思わぬところに援軍が現れてな。与党の民自党だが、我々と連立を組まないかと持ちかけてきた。選挙は与党にとっては情勢が厳しい。左翼野党に過半数を奪われるかもしれん。そうなったら、衆院で法案を可決しても、参院でことごとく潰される。それならば、愛国党と連立を結べば、衆参両院で過半数を維持できる。愛国党がキャスティングボートを握っているということだ。今度のことは民自党が手を打ってくれる。

それで何だが、君は本来、法律的には刑務所に入るべきなんだが、そうならない代わりに、君にふさわしい任務に携わってくれないか。というのは、参院選の後な、連立内閣で田父神党首が防衛大臣の地位に就く。連立政権では、中央アジアのテロ掃討作戦のため、現地に強力な特殊部隊を派遣する計画を秘かに立てている。そこでだ。君に、その特殊部隊の隊員になって欲しい。君のような勇ましい男なら、立派に成し遂げられるといえる。君の愛国心と勇ましさは今度の事件で証明された。自衛隊に入隊し、是非とも国のために戦って欲しい」

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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

平和教訓小説「平和という名の付く船」 第3章 告知

平和をモットーに世界一周航海をする船が、自衛隊の護衛を受けることに。次々と迫り来るハプニング。その時、乗客たちは!?

まずは第1章第2章をお読み下さい。

9条大会パーティが、佳境を迎え、そろそろお開きになろうとしたとき、タツミは立ち上がり、ステージに上がった。手にマイクを持ち話し始めた。
「みんなさん、聞いてください。これから大事なお知らせがあります。これからの航海において大変重要なことなので、解散する前にしっかり聞いて、心がけていただきたいことです」
代表のタツミが突然、出現。本来のリード役が、ずっと隅っこにいて、突然、深刻になって壇上に上がる。乗客たちは、何事かと思って、タツミを見つめる。
「これから本船は、ソマリア沖のアデン湾を通過します。ニュースなどでもご存知の通り、この海域は昨今、海賊の出没などで誘拐・強盗などの被害が多発しているところです。従いまして、皆さんの安全のため、自衛隊の護衛を受けることとなりました。これから、その護衛中の間の注意事項などについて、只今乗船されております海上自衛隊一等海曹 田之上寿朗さんよりお話をさせていただきます」
田之上はステージ上がる。タツミからマイクを渡され話し始めた。
「皆さん、初めまして。私が田之上です。これから、護衛中の航海について説明いたします。これから数日間の間、ソマリア沖を航行する間、この船は、他の商船と一緒にコンボイを組み、そのコンボイを我々が護衛させていただくことになります。この船には、私を含め自衛官がもしものため、武装して数名ほど乗り込みます。航行中、日没後は、デッキから外に出ず、何か緊急事態が起こりましたら、各自の客室に戻り、安全が確認されるまでけっして外に出ないでください」
「ちょっと待ってよ。そんなの無茶苦茶よ。私たちの船は、平和の船よ。どうして、自衛隊に守られなければいけないの。ワールド・ピースは自衛隊派遣に反対の立場のはずよ。海賊からの護衛なんだから、海上保安庁が護衛すべきなんでは」
と大会の進行をずっとタツミに代わってしていた副代表の女性スタッフ、ミナが憤って叫んだ。彼女は、バリバリの平和運動家だ。田之上を睨みつける。
「これは君たちの団体のツアーを請け負っている旅行会社が決めたことだ。乗客の安全を考えてのことだ。つまり、君たちの社長が決めたことだから従うのが当然だろう。それから、海上保安庁では、今回の航海の警備は無理だ。過去には実績があったが、かなりの外洋で、期間も長くなる。それに海保は警察だ。ソマリア沖は、内戦でまともな統治機構のない国の沖合だから、警察行動をする上で必要になる管轄国の了承を得られない。そんな場合は、自衛隊が出動するのが適当だ」
「そんな、それって軍隊として動くってこと。変よ。憲法で禁止されている行動よ」
「とりあえず、政府は認めている。国民を守るための義務として決めたことだ。社長も同意した。海賊に襲われたくないだろう。安全な航海をしたいだろう」
ミナは、今度はタツミをにらんで言う。
「ひどいわ。タツミさん。知っていて黙っていて、9条大会なんてさせて。私たちは平和団体よ。自衛隊に守ってなんて貰わなくていいわ。そもそも、ソマリア沖の海賊って元は貧しい漁民だった人達っていうじゃない。自衛隊を送るより、援助をしたりすべきよ」
「分かってくれ。やも得ないんだ。とても危険なところなんだ」
「じゃあ、信念はかなぐり捨てろっていうの」
タツミは言葉に詰まった。

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