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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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「私を「スキーに連れてって」の時代に連れてって」 第7章 ロマネコンティ
バブルの時代が、本当に幸せな時代だったのかを問い直す小説。

まずは序章から第6章をお読み下さい。

 志賀高原の横手山の頂上までリフトを乗り継ぎ、ツアーコースの始点に辿り着いた。そこからの景色は絶景で、遠くの左手に朝日山と右手に万座山が見える。そのまた、奥には煙を吹かした浅間山も見える。これから、三人が向かうのは万座山の方である。その万座山のスキー場近くの万座プリンスホテルまで滑り純平の上司である部長へロマネコンティという最高級ワインを届けるのが任務だ。
 始点には、「志賀ー万座ツアーコース 午後四時以降滑走禁止」という看板が掲げられている。現在、時刻は午後三時半。あと残る時間は二時間半だが、午後五時半ぐらいになると、日没になり真っ暗になってしまう。そうなると、山の中にいたままだと照明はなく滑走を続けるのは不可能だ。
 映画「スキーに連れてって」では、背中にしょえるライトで、前方を照らしながら目的地まで滑るシーンがあったが、あのようなことは現実には難しい。背負い型照明機器は電池も合わせて三十キロの重量である。あんな重量を背負いながら、ライトがあるとはいえ、暗い雪道を滑走するのはよほどの技術が必要になるし、大変危険だ。ゲレンデとは違い、ツアーコースは木々をぬって進む山道だ。明るいうちでないと、滑走など不可能だ。もし、暗くなってしまったら、止まって、そこで日の出になるまで動くのをまたなければいけない。また、その間は、零下二〇度になるほどの寒さが襲ってくる。
 涼子は、なぜかついていってしまった。というのも、自分の父親の出世がかかっていると思うときがきでならなかったのだ。だが、大事な役割を担うことになった。先導役は、もちろんのこと雪子で、背中には、折り畳み簡易テントを入れたリュックをしょい、腰には携帯無線トランシーバーを携えている。次に純平だが、純平は最も重要な役割、背中にしょうリュックにロマネコンティの入った木箱を毛布にくるんで入れている。転んでも、中のボトルが割れないようにするためだ。同時に毛布はもしもの時にも必要とされる。遭難の時の防寒のためだ。
 涼子は、背中に缶詰・パックなどの非常用食料と応急処置用の医療品などを入れている。もし間に合わず、途中でビバークして一晩を山中で過ごさなければいけなくなった場合の準備だ。スキーのプロである雪子がツアーガイドの常識として心得えている準備体制である。
「さあ、行くわよ。何とか日没前二時間で到達しましょう。私についていけば安心よ。これでも何度も、このコースを滑っているんだから、ルートはしっかり把握している。あの映画のおかげで滑るお客さんが多くてね、つい先週も付き合わされたばかりなの。普段は、午前中か、遅くても正午過ぎぐらいから始めるのだけど、今回は日没ぎりぎりという大チャレンジよ。こころしてかかって」
と雪子は、張り切りを見せた。純平も目が輝いて意欲満点だ。チャレンジをやり遂げられたら出世間違いなしだ。涼子も、心が高ぶった。まるで、親子三人で戦場に向かう気分である。
「行くわよ!」
と母が声を上げ、さっと滑り降りる。純平続く、涼子も続く。
 コースはゲレンデとはまるで違う。まず圧雪などによる整備がされていない。雪質にばらつきがある。そして、木々の障害物をぬって進まなければならない。 雪子は、らくらくと進んでいくのだが、純平と涼子は、しっくはっくしている。途中で、国道最高地点という標識の前も通った。雪が積もり道路は完全に埋まっている上を滑った。そして、滑っているうちに気付いた。朝から滑ったための疲労感が今になって襲いかかってきていることを。
 純平と涼子は何度も転んだ。純平は、そのたびにリュックを開け中のボトルが割れていないかを確認した。毛布と木箱に保護され、常に無事のようだ。
 起きあがっては、すぐに前進を開始した。休んでいる暇などない。だが、緊張と疲労が三人を徐々に蝕んでいるのを感じる。
 だんだん辺りも暗くなってきている。まだ、十分な日の光があり前方は、はっきり見えるが、どうも雲が増えてきているようだ。
 腕時計の時間を見た。午後五時少し前だ。
日の光が西から照りだして、オレンジ色の夕焼け色を醸し出している。
「おい、間に合うのか?」
と純平が雪子にきく。
「大丈夫よ。ここからだとあと三十分ちょっとぐらいだから」
と雪子は答えたが、数分後、突然、立ち止まり、
「あ、しまった。これって朝日山の方にそれてしまっている」
と言った。
「え、どういうことだ?」
「ルートを少し左にそらしたってこと。大丈夫よ。すぐに元のルートに戻れるから、ちょっとカーブがきつくなって、勾配も急になるけど、頑張ってね」
と雪子は言うと、右手に進路を変えた。
 朝日山側から万座山へ、その万座山の麓に万座スキー場のゲレンデがあるのだ。
 雪子が言う通り、勾配がきつくなっている。それに木々がより多く生い茂っている。純平と涼子は、ひいひいふうふう言いながら滑った。足が、がたがただ。だが、滑るしかない。
 しばらくして、
「みて、あそこが万座よ」
と雪子がストックで差した方向に、リフトの頂上地点らしい建物が遠くに見えた。あそこまで行けば、あとはゲレンデを下るのみだ。
 ほっと安堵感がわいだ。あともう少しだ。ここからなら、あの場所まで行くことは初めての者でもそんなに難しくない。見て取って分かる。と、その瞬間、 涼子は、はっと足が雪に吸い込まれる感覚を覚えた。


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スキー | 20:14:49 | Trackback(0) | Comments(0)
私を「スキーに連れてって」の時代に連れてって 第5章 父の真相
バブルの時代が、本当に幸せな時代だったのかを問い直す小説。

まずは序章から第4章をお読み下さい。

「おい、またお前たちか、危ねえな」
とうずくまる雪子と涼子を目の前にして、純平が言った。
「大丈夫?」と雪子。
「ああ、それよりもこの娘は大丈夫なのか、危なっかしいな」
 涼子は、何も言わず押し黙っていた。自分の今、しようとしたことに恐ろしさを感じ、体がかたまった状態だ。
「ま、しっかりしろよな」
と純平。ぶっきらぼうにその場を去る。スキーで降りていくが、しばらくしてバランスを崩しこける。そして、立ち上がり、また、こける。何だか見ていて吹き出しそうな光景だが、涼子と雪子は、そんな純平の姿をぼおっと眺めいてた。
「全く、どういうつもり、また、転げ落ちるつもりだったの? 一人にしておくと何するか分からないわね。私が後から来なかったら、あの人も巻き込んで崖から転落よ」
と雪子が怒って言った。涼子は小声で「ごめんなさい」と言い返した。
「さあ、今日はスキーはお終いね。さっさとホテルに戻りなさい」
と呆れた雪子が言った。二人で中級コースを滑り降りた。雪子は、これからレッスンがあるので、そのままスキー場に残ることになった。涼子はホテルに戻った。

 夜遅く、涼子は仕事が終わり従業員用の住み込み部屋に戻った。その日は、倉庫の整理や調理室での皿洗いなどで客と顔を会わすことなく過ごせたため、純平と顔をまた会わすことはなかった。だが、気分は落ち込んでいた。自分が人殺しまでしようとした、それも、実の父親を。自分が生まれる前の父親だから、自分の存在までも否定するつもりで成し得た凶行だった。そんなに父を憎んでいたのだろうか。そんな自分が情けなかった。
 部屋には雪子がいた。御茶を飲んでテレビを観ていた。三上博史主演のトレンディドラマを観ていて、丁度、健康飲料のコマーシャルに変わったところで涼子が入ってくると、ぎょろりとにらみつけた。

お昼のことが、まだしこりになっているようだ。
「スキー場でのことはごめんなさい。わたし、つい無理しちゃって」
と涼子は弁解がましく言った。何とか雰囲気を変えたかった。
「思ったんだけど、あなたあの人を殺そうとしたんじゃない?」
「え?」と突然の問いかけに涼子はぎょっとした。
「何を言っているの? そんなことするわけないじゃない」と慌てて否定した。
「でも、私があの場で見た限り、あなたはあの人に突進していったわ。確か、磯崎純平っていう中日物産の人。どう考えても変。あなたは記憶喪失だなんて言っているけど、本当は何か隠しているんじゃないの? 昨日、ホテルに来て、訳の分からないこと言って、あの人の部屋に駆け込んだわ。あの人がいることを知っていて駆け込んだんじゃないの? それで突然、腰を抜かして、あの人に診療所まで運んで貰うようにした。あの人と何か関わり合いがあるんじゃないの? もしかして昔の女とか、恨みがあって復讐をしようとしてあんなことを」
「とんでもない!」
と涼子は叫び声をあげた。どうしてそんなことになるの、と心の中で叫んだ。あまりに大声だったので、雪子はおののいて涼子をみつめた。
 しばらく沈黙して、気が落ち着いたのか雪子が涼子に言った。
「まあ、何でもないんならいいけどさ、たださ、あの人と関係なんてないというのならお願いがあるの」
と思わぬ返答に、今度は涼子が驚いた。涼子は自分の殺意を見抜かれた上、とんでもない誤解に発展したのが仰天だった。
「お願いって何?」
「恋のキューピットになって欲しいの」
「キューピットって、誰の?」
「分かるでしょう」
「純平さんと雪子さんの」
「そうよ」
「え、どうして?」
「狙っているからよ」
とにたりと笑って雪子が言った。涼子はどきっとした。母が自分に父とくっつくようにお願いしている。娘をキューピット役に。だけど変だ。母はどうして父に惚れ込んだのか。そもそもスキー場でかっこく滑る父の姿に惚れてという馴れ初め話しは嘘だった。
「なぜ、あの人がいいの?」
と涼子は興味津々になって訊いた。
「うーん、私さ、商社マンと結婚することが夢なの。この仕事も、そんな夢を実現したくて選んだの。一流商社の社員旅行なんて絶好の機会じゃない。だからさ、折角出会いがあって、それなりに知り合えたんなら、そのチャンスを逃す手はないじゃない。何だか悪い人じゃなさそうだし、あなたも分かるでしょう。診療所まで担ぎ込んでくれて、今日もあんな目にあっても態度に大人げがあったわ」
と雪子が嬉しそうに言う。涼子は思った。母は商社マンだから父を選んだんだ。
 何とも情けなく思った。でも、この際、断りづらい。できることならしなければいけないのだろう。考えてみれば父と母がくっつかない限り自分は生まれてこなかったんだから。
 

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スキー | 21:58:30 | Trackback(0) | Comments(0)
「私を「スキーに連れてって」の時代に連れてって」 第3章 1989年3月 
バブルの時代が、本当に幸せな時代だったのかを問い直す小説。

まずは序章第2章をお読み下さい。

「ちょっと、大丈夫?」
という女性の声で涼子は、はっと目を覚ました。気を失っていたわけではないが、転げ落ちて、その衝撃でぼおっとしていたのだ。特に怪我もない。痛いところもない。片足にスキー板をつけたまま横たわっている状態だ。よし、と思い起きあがった。
 起きあがり、板をつけた片足を引きずりながらゆっくりと転げ落ちた坂を上った。ああ、死ぬかと思った、と涼子は無事な自分にほっとした。
 赤色の柵ネットのところに白いスキーウェアを着た女性が立っていた。涼子は、その女性を見上げた。はっとした。何とも見覚えがあるような、「お母さん」と声を上げようとしたが、喉元でそれをとめた。
 母の雪子に似ているが、涼子の知っている雪子よりずっと若々しく、髪の毛は肩の下まで伸びるほど長い。年齢的にいえば二十代前半だ。
「怪我はない? 大丈夫?」
とその母似の女性は言う。その女性は、胸元にネームプレートを着けていた。「志賀高原スキー場公認インストラクター 松本雪子」と書かれている。涼子は、はっとした。松本は母の旧姓だ。というか父との離婚後、その姓に戻っているが。単なる偶然か。
「大丈夫です」
と涼子はとりあえず答えた。
「そう、よかった。だけど、片方の板は、それにストックは?」
と松本雪子に言われ、
「それは、どこかに?」
と涼子は言いながら、辺りを見渡すが、転げ落ちたときに放したストック二本と外れた片方のスキー板は見当たらない。どこにも落ちてないのだ。
「ここで外しちゃったのよね? あなたが落ちたところを見た訳じゃないけど、そのはずよね?」
と松本雪子。
「ええ、そのはずです。だから、この辺にあるはずでは」
と涼子は改めて見渡すが、周囲十メートル四方に板やストックは全く見つからない。
「あら、あなたのつけているスキー板って、変な形ね。改造ものなの?」
と雪子が、涼子の板を見ながら言う。
 涼子は、えっと思った。いわゆるカービングスキーだ。そんなに新しいものでもないはず、インストラクターがそんなことに驚くとは不可思議だ。
 だが、雪子は初めて、それを見るように真剣に見つめる。涼子は、雪子の履いているスキー板を見た。その板は、映画「私をスキーに連れてって」で見たような先がとんがって、反り上がっているような形。現代では主流ではない板だ。インストラクターだから、そんな板を履くのか、と不思議に思った。
 すると、二人のいるところに、スノーモービルが近付いて来た。中年の男性が乗っていた。
「どうしたんだ?」
と男。
「ああ、キャプテン、この子が改造もののスキー板を履いていて、ストックと片方の板をなくしたようなんです」
 インストラクターたちのリーダーの男は、涼子のスキー板を見る。
「何だ、これ? これってもしかして、スノーボードとかいうのじゃないのか」
「スノーボードだと、もっと大きくて幅が広くて付け方も違うんでは」
と雪子が言うと
「うーん、だが、スノーボードに似て非なるもの。とはいえ、通常のスキー板ではない。とにかく、ここでは、こんな板は滑走禁止だ。悪いが、すぐに退場してまともなのに履き替えるかしてくれ」
とキャプテンは言った。
「そうね。分かった? あなたは規則違反の板をつけているわ。他のお客さんに迷惑よ」
 雪子は、涼子を少し睨んで言う。
「え、悪いんですけど、この板はホテルでレンタルしたものですよ」
と涼子は言い返す。
「ホテルでレンタル? え、そんなものをレンタルなんてしているはずないわ」
「いえ、しているんです。今朝、借りてきたばかりですよ」
と涼子。突然、ふっかけられた苦情に仰天し、むかっとした。
「変よ。どこのホテル?」
「この下の志賀高原温泉ホテルです」
「あら、私が今、滞在しているところよ。今は、そこのホテルのお客さんを主に指導しているの。あなたもお客さんってこと?」
と雪子が言うと
「そうだけど」
と涼子は答えた。
「ふうん、それらしくないわね」
と何とも意味深な言葉を雪子は口ずさむ。
「おい、とにかく、このまま滑って貰っては困る。とりあえず、麓に降りてくれ」
とキャプテン。
 腑に落ちない気分で涼子は、キャプテンの後ろに乗せられ、スノーモービルで下まで降ろされることになった。雪子はスキーで平行してさっと滑り降りる。
 涼子は、雪子の滑りを見て驚いた。楽々と上級者コースの急な傾斜角を降りていく。プロ並みの滑りだ。顔を見ると、母、雪子が若返ったような顔。それに背格好も似ている。涼子の知っている母は、病気でかなりやつれているが、若くて健康だったら、こんな外見だったと思われる姿だ。
 だけど、母のはずではない。旧姓と名前が同じだが、若返ってこんなところにまで来て、こんなにうまくスキーが滑れるはずがない。
 麓に着いた。とりあえず、周囲を見渡す。何だか様子が変だと思った。そんなに変わってないはずなのだが、何かが変わっているというような雰囲気が漂う。
 リフト乗り場を見ると、かなり多くの人が並んでいる。もう時間が経ったからなのだろうか。ふと、そのスキーヤーたちのスキー板を見ると、皆、雪子がつけているような旧式のスキー板をつけている。カービングスキーやスノーボーダーは見当たらない。
 変なの、ホテルの係りの人は、今はカービングスキーが主流だと言っていたのに、実際は違うじゃないか。
 志賀高原温泉ホテルの前にスノーモービルが着く。涼子は降りて、とりあえずスキー板を外した。雪子もスキー板を外す。
「さ、行きましょう。お客様」
とからかうような感じで涼子に言う。雪子についていくようにホテルに入る。


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テーマ:幻想小説 - ジャンル:小説・文学

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