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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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旅小説「私を沖縄に連れてって」 第20章 ヘインズの秘密
米軍基地建設に抵抗する海人(うみんちゅう)の戦い

まずは第1章から第19章までお読み下さい。


 辺奈古は、日もそろそろ暮れ始める時間になっていた。キャンプのゲートに向かおうとしたが、たまたまゲートに向かう途中の金網フェンスから、芝生のフィールドで格闘訓練の指導をしているヘインズ曹長を見つけた。立ち止まって、金網からヘインズとヘインズから訓練を受ける数十人の若い兵士たちの姿を眺めていた。ヘインズはTシャツにサングラスをしており、大柄な兵士たちの中でも一際、体格の大きさと逞しさが目立つ。一人の訓練兵士を地面に四つんばいにしたうえで、羽交い締めの方法を教えている。殺人の訓練なのだろうか。
 金網越しの自分に気付いてくれないだろうかと思った。いちいちゲートまでいって呼び出すのも面倒くさい。
 すると、警備員、見るからにウチナンチュウの年老いた男が近付いてきて、
「あんた、ここで突っ立って何をしている。じっとしてないで、どっかいかんね」
と声をかけた。


 龍司は、警備員に言った。
「あの教官、ヘインズ曹長っていうんでしょう。彼に伝えてくれませんか、トニーのことで緊急に用があるって。そう言えば分かるし、そのことを伝えなければあなたにとって不利な結果になりますよ」
 警備員は、はあ、という顔をしたが、しばらく考え込んで、訓練中のヘインズに近付き、龍司のいる方向を指差し、何かを言っている様子だ。
 すると、ヘインズが走って金網までやってきた。
「やあ、チャーリー、ごきげんよう」
「リュージ、トニーのいる場所を知っているのか」
「二人だけで話せないか」と龍司。
「もちろんだ、そこで待ってろ。今から、そっちに行く」
とヘインズ、訓練生を解散させ、建物の中に入っていく。思った通りだ。
 そして、数分後、龍司のところに現れた。二人は車の中に入った。
「トニーに会いたい。君のところにいるんだろう」
「事情は分かっているよ。だけど、彼を連れ戻す気ではないよな。明日にはアフガニスタンに連れて行くのだろう」
と龍司。
「何を言っている。奴は脱走をしたんだぞ志願して入ったからには決められた任務を全うする契約がある。このまま明日の招集までに戻らなければ軍法会議にかけられる。そうなれば刑務所行きだ。刑務所を出た後は、そのことが一生つきまとう。非国民としてリストされ、就職もまともにできなくなるんだ」
 龍司は言葉を失った。これが軍隊のある国の掟なのか。日本の自衛隊なら好きな時に除隊できる。そして、除隊してもお咎めなしだ。
「しかし、今のトニーを見る限り、とてもじゃないが戦場に行ける状態じゃないぞ」
「私が彼を説得させる」
「無理矢理連れ戻すんじゃないよな」
「そんなことはしない、私と彼なら、じっくり話しをして解決策が見つける。会わせてくれ。頼む」
 ヘインズの表情は深刻そのものだ。
「分かったよ、チャーリー」
と言って龍司は車を発進させた。

 車は別荘に着いた。日は暮れ、辺りは暗くなっている。電灯の点いた別荘の中に入った。リビングルームにセーラとトニーがいた。二人はソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
 トニーは、ヘインズを見た瞬間、立ち上がった。
「僕は戻らないぞ」
と大声で叫んだ。
「連れ戻しに来たんじゃない。一緒に話しに来たんだ」
とヘインズ。
「うそだ。あんたたちもひどい。助ける振りして、こんなひどいことするなんて」
 トニーは、さっと走り、キッチン側に向かい、キッチンの裏口を開け外に出た。
 三人はトニーの後を追う。トニーはひたすら走る。暗い中、森の中を走る。
「トニー、止まるんだ」
 龍司が叫んだ。この先が崖だということを知っている。止まらざる得ないだろう。
 だが、トニーは止まらなかった。そして、その崖から姿が見えなくなった。どうしたのだろうかと思った。暗くてどこへ行ったのか分からない。しかし、この先が崖である限り、その先に進めないはずだ。
 崖を滑って降りたのか。昼なら、腰をかがめながら、足を滑らせながら降りられないこともないが、こんなに暗くなると足元が見えないから転げ落ちるしかなくなる。そうなるとかなり急だから、危険だ。
 三人とも、崖の先まで来たが辺りにトニーはいない。崖の下は真っ暗で何も見えない。崖の下は海岸だ。二、三〇メートルの高さがある。
 海岸まで、車で道路を走って降りることにした。五分後、崖の真下の海岸まで来た。真っ暗な砂浜にヘッドライトを照らす。崖の真下のごつごつとした岩場に人らしきものが横たわっている。
 まさか、と思って照らした。あ、トニーだ。倒れ込んでいる。どうなったのかと不安になり近付く。
 血まみれだ。頭や胸から血を流している。かなりの重体だ。ヘインズが抱き上げる。反応がない。しかし、虫の息程度の呼吸と脈はあるみたいだ。急いで、救急車を呼ばないと、と思い龍司は携帯電話を取り出した。
 すると、ヘインズが叫んだ。
「私の息子なんだ。私の息子なんだ、トニーは」
 チャーリーは涙を流しながら大声を上げた。



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沖縄 | 21:56:26 | Trackback(0) | Comments(0)
旅小説「私を沖縄に連れてって」 第17章 トニー
米軍基地建設に抵抗する海人(うみんちゅう)の戦い

まずは第1章から第16章までお読み下さい。

 トニーっと聞いて、はっと驚いた。
「トニーて、もしかして浜辺のこと、それもついさっき起こったことか」
 ヘインズはそう言われ、周囲が気になったが、バーテンダーは英語が片言しか話せない男であり、それ以外、数人ほど年老いた客がいたが、カウンターからは離れた席に座っており、英語も理解できないだろうし、話している声も聞こえない距離であるということを確認すると、龍司のすぐそばの椅子に座った。
「そうだ、監視カメラに映っていた。二人の男たちが君に暴行を加えた。あの美しいレディにも変なことをしかけそうだった。そして、トニーは勝手に銃を持ち出した。三人とも門限を破って基地の外に出た」
「ほう、すばやいな。さすがアメリカ海兵隊だ。それがどうしたっていうんだ? 何か俺たちの方に問題が」
と龍司はしかめっ面になって言った。
「いや、すまないと謝りたいんだ。私の部下が、君たちにひどいことをしたようだ。君とあの側にいたレディに対して。君もそうだが、彼女も大丈夫かな」
「大丈夫だよ。彼女がアメリカ人だから気掛かりになったのか。俺のような日本人に対してだと知らんぷりするんだろう」
「君たちが、俺たちのことを良く思っていないのは分かっている。特にあの新兵たちは、来週にもアフガニスタンに派遣される予定になっている。だから、いつになく気が立っているんだ」
「ほう、そりゃ見事な言い訳だ。それで何だ、俺たちにどうしろと。許してくれってか」
と龍司が、いきりなって言うと、ヘインズは困った表情になった。龍司は思った。なるほど、実のところ気のいい奴なんだな、このヘインズという奴は。
「ふん、いいさ。カメラの映像だけでは分からなかったろうが、あのトニーという奴のおかげで助かったんだ」
「え、どういう意味だ。トニーはいったい何をしようとした? 映像だけでは音もなく、はっきりものを見るには暗過ぎた。おしえてくれ」
「二人の男たちがな、彼女と俺に近付き、俺に対しては暴行、そのうえ、フェンスのリボンを外すことを強要したんだ。奴ら酔っていて彼女に対しても、一つ間違えば何するか分からない状態だったが、あのトニーが突然現れて、俺たちを助けてくれたんだ。銃で男たちを威嚇してな。あんな小男だからこそ、銃でないと止められなかったんだろうけど」
 龍司は、にんまりとした表情で言った。
「はあ、そうか。そういうことだったのか」
とヘインズの表情がほころんだ。何だか、トニーに特別の思い入れでもあるような素振りだ。龍司は、それを見て言った。
「どっちにしろ、海兵隊の不祥事だな。別に表にはしない。ひどい目にあったけど、同時に同じ隊員によって助けてもらったということで、相殺して構わないよ。こっちも変なことには関わりたくない。誰にもいわん。彼女も気にしないだろう」
 ヘインズが安堵の表情を浮かべる。
「だけど、あのトニー、大丈夫かな。銃で威嚇された仲間は黙っちゃないだろう。同じ基地にいるんだし」
と龍司は心配になって言った。
「大丈夫だ。そのことは私が何とかする。やつらこそ規則を犯して、君たちに迷惑をかけたのだから、トニーを咎めるつもりはない」


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沖縄 | 18:08:23 | Trackback(0) | Comments(0)
旅小説「私を沖縄に連れてって」 第14章 米軍は日本を守らない
米軍基地建設に抵抗する海人(うみんちゅう)の戦い

まずは第1章から第13章までお読み下さい。
 
「あんな演説をした君でさえ、その程度の認識というのが現状だよな。まず、いい例が沖縄の海兵隊だ。普天間には飛行場があり、この辺奈古には訓練所がある。その他、北部の山間部にもジャングル戦闘のための訓練所があるよな。しかし、これらの施設は日本の防衛のためにあるわけではない。皆、イラクやアフガニスタンへの戦闘のための前線配備と訓練のためさ。ちなみに言っておくけど、海兵隊というのは大規模な戦闘に対処するための軍隊ではない。戦争が起これば、地ならしのため最初に戦場に入る先遣隊のような役割を担っている。それ以外にいうと、救出部隊として民間人を紛争地帯から救い出す任務も担っている」
「じゃあ、彼らは日本人を救ってくれると?」
「ふふ、例えば、朝鮮半島などで有事が起こった場合、最初に救出対象になるのはアメリカ人と永住資格を持つ者、まあ、それは仕方ないだろう。だが、次はというと、それはイギリス人、カナダ人、オーストラリア人などのアメリカの友好国の市民だ」
「え、日本人は含まれていない?」
「いや、その次の優先順位の「その他」の分類に含まれることになるかな、はは」
「その他だって?」
「ああ、そうさ、ここでいろいろと好き勝手に日本人の税金で訓練しているが、日本人は必ずしも助けてもらう対象になってないとさ」
「こりゃあ、驚きだ。てっきり自衛隊が出来ないから代わりに助けて貰えると思っていたのに。だけど、日本の国土が攻められたら米軍は守ることになっているのでしょう。日米安保条約にも沿う書いているはずだ」
「ふふ、条約には、そう書いているのだけど、それにはいろいろと条件がついているのがみそだ」
「条件とは?」
「仮にどこかの国が日本に侵攻することがあっても、米軍が動くには、大統領と米国の連邦議会の承認があってでないといけないということさ。安保条約の防衛義務を定めた第五条では「憲法や手続きに従い」と書いてある。彼らの国の憲法に照らして、つまりはアメリカの国益に則したものであるかどうかの判断をした上でという意味だ。大統領がOKしても2ヶ月すれば議会が拒否すればそれで停止だ」
「条約で決まっていても、自動的には防衛しないってこと? その時のアメリカの事情に左右されるってことですか」
「まさしくその通り。そもそも、条約とは別に日米で防衛のガイドライン合意がされており、その中には、日本防衛の一義的責任は自衛隊にあるとなっている。米軍は、自衛隊が先に出た後に、それをサポートするのが役割だと」
「え、それって今までの政府の説明とは逆では、自衛隊は盾で、米軍は矛の役割を担っているって。それじゃあ、自衛隊が前面で戦わなければいけないってことで」
「そう、そのうえ、そのサポートさえしてもらえるかはっきり約束していない」
「じゃあ、いったい何のために米軍は日本にいるんですか」
「それは君も知っているんだろう。日本が戦争に負けて、その占領のために最初に来たんだ。だが、その役割が日米安保で日本を守る立場になった。どうしてか分かるか」
「うーん、歴史の授業で習ったけど、冷戦になってソ連と対抗するためとか」
「その通り、日米安保はソ連包囲網の一環だったんだ。ソ連の共産主義の拡散を防ぐ防波堤の役割を日本に担わせたんだ」
「だから、日本をソ連から守っていた」
「おっと、それがまた違うんだ。守っていたというよりは、共産主義に日本が取り込まれるのが怖かったのだろう。アメリカの戦略として、自由主義の勢力保持が目的だったんだ。日本は、その戦略の片棒を担ぐために、基地を提供したということさ。その見返りに独立国家として認められ、そのうえ、経済援助を受け経済復興を果たした。いわゆる吉田ドクトリンだ。むしろ、敗戦国の日本がうまく立ち回った戦略ともいえる」
「じゃあ、冷戦においてアメリカの戦略を助けるという目的であって、日本の防衛はついでというか・・」
「まあ、口だけだったということかな。本気で防衛する気などなかっただろう。本当に日本の対ソ連防衛を考えていたなら、沖縄に基地が集中するのがおかしい。本来なら北海道だろう」
「そうですね。北海道には米軍基地はないですよね」
「ソ連が責めてきたら自衛隊に対戦させて、自分たちはとっと逃げる時間の余裕を稼がせるためさ。沖縄は、その意味で安全な場所なんだ、米軍にとって。そして、ベトナム戦争時は最大の前線基地として使われた。今はイラクやアフガニスタンへの前線となっているが、昔と違って、軍には機動力があるし、距離的にも、もっと近い基地が他にあるのだけども、沖縄の方が都合がいいとなっている」
「え、どうして?」
「思いやり予算を日本が払うから、経費が安くつくためさ」
「え、そんな理由で」
「ああ、何たって全駐留経費の8割を日本がもっているんだ、そりゃ安くつくさ」
 佐藤はバーボンで顔が赤らんでいた。ややしどろもどろの口調になってきている。龍司は、それでも訊きたいことがあった。
「ソ連はもう崩壊しましたけど、今、日本にとっては北朝鮮と中国という別の脅威がありますよね」
「ふふ、北朝鮮、確かに拉致とかけちなことをする国だが、自衛隊の相手にはならんよ。戦闘機さえ飛ばせない。だからあの国は核ミサイルの開発にいそしむんだ。核ミサイルに対抗する術は現状ではあり得ない。打ち上げられたら数分で到達さ。核に対抗するには報復としての核を保持するという抑止力で対抗するのが策だが、北朝鮮のような自暴自棄を武器にする国家相手に抑止力など通用するはずがないだろう」
「でも、中国は軍事力をどんどん拡張していっていて日本にとっては脅威でしょう」
「現状では、まだ自衛隊の方が軍備では上だ。だが、近い内に超える可能性がある」
「大変ですよね。尖閣諸島とかに攻め入ったりしたら、そのために米軍が必要では」
「だから、言っただろう。米軍は有事になったからといって自動的に対処してくれるわけではないと。それにアメリカは同盟国であれ、領土紛争に介入しないという方針になっている」
「え、それはどういうことですか?」


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沖縄 | 18:26:45 | Trackback(0) | Comments(0)
旅小説「私を沖縄に連れてって」 第11章 妨害開始
米軍基地建設に抵抗する海人(うみんちゅう)の戦い

まずは第1章から第10章までお読み下さい。

 七月
漁港に変化が訪れた。というのは、ちょくちょく防衛局の人員が訪れ、船に乗り滑走路建設予定地の沖合まで出ていく姿がしばしば見られた。それは環境アセスメントという名の元の建設着工の準備作業といえるものだ。
 そして、その船出には辺奈古の漁民の船が駆り出されている。最近、漁に姿を見せなくなった海人の下地が、防衛局の調査員を乗せているので、安次富が調査の船出から戻ってきた下地に詰め寄った。
「おまえ、どうしてこんな奴らと一緒に海に出る。ウミンチュウとして恥ずかしくないのか」
「安次富さん、知っているだろう。俺は、去年、お袋が重い病にかかって、娘は来年、高校卒業で、できれば大学に行かしてやりたいし、漁業だけじゃ十分な稼ぎができねえんだ。この人たちを沖合に出すだけで一回に四万円ぐらい払って貰えるから・」
「だからって言って、俺たちの漁場を壊すことに協力するのか」
と安次富、憤りを隠さない。下地は何も言わずに、防衛局の者共と一緒に去っていく。
 よくあるパターンだ。敵は、そういうところに付け込んでくる。船のチャーター代を弾み、滑走路ができて漁業ができなくなったら補償金を払ってやると持ちかけてくるのだ。考えてみれば、こんな稼ぎの少ない重労働より安易に入る高額の現金収入を求めるのは無理もないことであろう。
 海を守りたい、戦争の基地をつくらせたくないというのは、単なるセンチメンタリズムに過ぎないと思える。
 だが、安次富や龍司のように海人として生き続けたい者にとっては生計の場を奪われるのだから許せることではない。また、一般の沖縄の人々にとっては、政府が普天間の基地の負担を取り除くといいながら、基地を県内にたらい回しにする今度の移設案は納得いくものではない。規模を半分にして移設すると言いながら普天間にない軍港まで備えた新基地を建設するのだから、かえって負担が増加しかねない。移設するのなら、なぜ県外ではないのか。そもそも、普天間飛行場は米軍の基地なんだからアメリカに持っていけばいいのではないのか。
 テント村の活動家たちは、調査船の漁港出入りが頻繁になったことを受け、さっそく公道を開始することにした。彼らの信条は非暴力直接行動だ。
 漁港の船を係留している場所の前に百人以上の人々が集まった。そして、朝早くから座り込んだのだ。防衛局の調査員は船に乗せないように腕を組み合って人間の鎖を作り船に乗るのを妨害した。
 互いに怒号で罵り合いを続けた挙げ句、防衛局員の船出は、ことごとく阻止された。
 しかし、防衛局は、それならばと遠い埠頭から船をチャーターして辺奈古沖にくり出し、調査を続ける。
 それに対抗するため、活動家たちは、カヌーやゴムボートをくり出し、調査船が航行する進路に入り込み海上での妨害活動に乗り出す。最初、防衛局側は、何隻ものカヌーやゴムボートを相手に引いてしまい、作業を中止せざる得なくなったが、そんな日が数日続いた後、防衛局は調査船に海上保安庁の巡視船が同行することになった。巡視船から、活動家たちのよりもモーターの馬力が格段に優れサイズも大型のゴムボートが数隻、海に出された。妨害をするカヌーやゴムボートを相手に拡声器で警告を発し調査船に近付かせないようにガードを張った。
 これには活動家のカヌーやゴムボートでは全然相手にならない。海上保安庁といえば、こういうのに対抗するプロだ。
 安次富と龍司と仲間の海人たちは、その様子を漁をしながら遠巻きに眺めていた。とりあえずは活動家たちに任せておこうと思ったのだ。自分たちは自分たちで生活のための漁をしなければならない。また、彼らの活動に積極的に関わってくると、市場で競りを行うなど漁協組合員としての営業活動にも影響が出てくる。公権力がどのように介入してくるか予想がつかないのだ。
 安次富の長男である洋一が筆頭ということもあり活動家たちも、漁民のその辺の事情はよく理解しており、妨害活動に誘ったりすることはしなかった。海人としては、影で見守り応援するという形での支援しかできないのだ。
 しかし、そんな悠長な態度では、ままならない事態が訪れた。敵が本格的に建設の準備作業に乗り出したという情報が入った。それはボーリング調査を行うというものだ。ボーリング調査は、海底を掘削しての地質調査だ。当然のことながら珊瑚の破壊も伴う。そして、掘削作業をするための足場を確保するための櫓を海上に建てるという。調査の後は、その櫓を足がかりとして埋め立て作業を行うのだろう。
 これは徹底的に阻止しないといけない。

八月
 早朝、辺奈古の海人たちは、船を二隻、沖に出した。その内の一隻は龍司と安次富が乗るアシトミ丸だ。テント村の活動家たちのカヌーやゴムボートと行動を共にするつもりだ。


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沖縄 | 02:05:08 | Trackback(0) | Comments(0)

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