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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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日本昔話的小説: 雪のように白い肌の女 第2章 プロポーズ大作戦
雪山で出会った雪女のような女と約束したこととは。

まずは第1章をお読みください。

「ここから何分ぐらいで着くの?」と伊代がきく。亮は「去年は44分と30秒だったかな。順調にいけば、そのくらいさ」
「随分、正確に覚えているのね。いつものことだけど」と伊代。亮は、ははと笑った。
この日、駅前からスキー場に着くまでの時間は、昨年に比べ長めで45分と35秒だった。バスを降りると、そこは駅前と比べ、はるかに多い量の雪が積もった場所だった。この日は、空がどんより曇っている。晴れていれば鹿島槍ヶ岳の絶景を目の当たりにできるのだが、この日は駄目らしい。スキー場の玄関には「本日、火祭り開催」と幟が立ててあった。
だが、これから、最初に行くのはスキー場ではない。近くで予約を取った民宿である。亮が毎年、使っているところで名前は囲炉裏荘という。藁ぶき屋根の古民家風の建物で、玄関口のそばに客が集まれる囲炉裏のある土間と畳部屋があるのが特徴だ。
中に入る。「すみません、2名で予約していた松本です」と亮が声をかける。すぐに、頭の禿げた初老の旦那が現われ「どうも、お待ちしておりました」と挨拶した。
二人は、和室に案内された。こぎれいな六畳部屋にテーブルと腰かけが二つ。テレビが一台置いてあった。とはいえ、荷物を置いてすぐにゲレンデに出発である。ただ、伊代は民宿からスキーウエア、ゴーグル、ヘルメット、スキー板、ブーツ、ストックを借りることになっている。事前に身長、靴のサイズなどは伝えていたので、すでに用意されていた。亮は、自分のスキーセットを持ってきている。
伊代が準備ができて、さっそく、ゲレンデへ。
「うああ、歩きにくい」と不満げな口調。生まれて初めてのスキーだから無理もない。
ゲレンデで二人分、二日分のリフト券を買った。
まずは初級者コースのリフトに乗り、降りてゲレンデに向かうと伊代の滑りの練習を始めた。
伊代は、何度もこけながらも、1時間もすると滑られるようになった。フリーの記者として飛び回っており体力は抜群にある。沖縄で高校生をやっていた時までは、サーフィンやマラソンで体を鍛えていたので運動神経はいい方である。
だが、長年、スキーを毎年のように滑っている亮と比較するとまだまだである。亮の滑りについていくのは大変で、亮は伊代に合わせるため滑りのレベルを落とした。このスキー旅行は伊代のためにあるのだ。亮は伊代と一緒に滑られることを何よりも幸福だと思った。
そうだ、そして今夜は、そのことにけりをつけるのだ。今夜の火祭りで、プロポーズをするのだ。思いっきりロマンチックなムードの中で。そのために来たのだから。

日が暮れ、夕食時が済み、当たりが真っ暗となり、ゲレンデで火祭りが始まった。昼まで滑っていたスキー及びボードの客は、板を外し、ゲレンデで始まるイベントの見学者となった。照明を落とし真っ暗になったゲレンデに突如として現われたのは、松明の光の列である。松明を持ったスキーヤーやボーダーが、ゆっくりとくカーブを描きながら降りてくる。まるで火のシュプールを描いているようだ。
「すてきね。きれいだわ」と伊代。
これから、大きな藁を束ねてつくった柱を燃やし、キャンプファイアのように天高く火を吹き上げながら燃やすイベント、そして、打ち上げ花火もとりおこなわれる。
亮は、伊代の嬉しそうな表情を見ながら、いつ結婚について言いだそうかタイミングを見極めようとしていた。一番、ロマンチックなムードになった時が狙い目だ。ところが、その夜、タイミングをつかめなかった。というのは、客が多く話し声がうるさく、そのうえ、イベントを盛り立てるためか、BGMもとても大きな音量だったため
二人だけの会話をまともにできるような状態ではなかったのだ。大声を叫ばなければ何を言っているか分からない。まるでクラブにいるような状態だった。昨年まで亮が参加した火祭りは、もっと静かだったのだが、今回は、どうも騒がしくなるようなスタイルに変更したらしい。それはそれで楽しかったのだが、プロポーズをするのには空振りだった。

火祭りは終わり、二人は民宿へと戻った。

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テーマ:自作連載小説(SF,ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 16:07:38 | Trackback(0) | Comments(0)

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