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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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日本昔話的小説: 雪のように白い肌の女 第3章 コース外滑走
雪山で出会った雪女のような女と約束したこととは。

まずは第1章第2章をお読みください。

 翌朝は予報通り、快晴であった。朝から鹿島槍ヶ岳がゲレンデから眺められた。
「まあ、なんてきれいなの。寒いけど、これを見るとわざわざ来てよかったと思えるわ」
二人は、鹿島槍ヶ岳がじっくり眺められるコースを滑りまくった。
 リフトを乗り降りして何度か同じコースを滑る。何度見ても同じ景色だが、飽きることはない。だが、亮は、これでは飽き足らない気分となった。というのは、通常のコースを外れて滑るコースに行きたかった。通常のコースでは二人きりになれない。雪もふんわりとしているのだ。昨晩から早朝にかけて雪が降ったらしくパウダー状態になっていることは間違いない。
 規定のコース外なので、スキーヤーはこっそりと滑り降りていく。スキーパトロールに見つかったりしたら、リフト券を取り上げられる。また、雪崩などの遭難事故にあって救出された場合、その救助費用は全額自己負担とされてしまう。
 だけど、そこに行きたかった。伊代を連れて行きたかった。ふわふわパウダーの雪の上で、鹿島槍が岳を眺めながらプロポーズ、絶好のシチュエーションだ。
「ねえ、伊代、これからこのスキー場で最高のコースがあるんだけど、来て欲しいんだ」と亮が言う。伊代はついていく。すると辿り着いた場所には、境界線を示すように杭が打たれ、その杭と杭の間にはロープが張られて、そのロープには赤い札が垂れ下がっている。
「ここに入ってはいけないということでしょう」と伊代。心配そうな表情で言う。
「でも、滑るには最高のコースなんだ。整地されていないから、ふわふわの軽い雪の上で存分に滑られる。僕は何度も滑ったことがあるよ。二人だけで誰も他にはいない僕たちだけで滑られる場所なんだ」と亮はにっこりと軽い調子で言う。
「いいわ」と伊代。安心した表情になった。
 二人はロープをくぐり、さっと滑り降りていった。思った通り、ふわふわのパウダースノーだ。まだ誰も踏み込んでいないらしい。二人だけで独占できるゲレンデだ。
「うわあ、最高。全然違うわ」と伊代は大喜びだ。整地されたコースに比べはるかに滑りやすい。滑っていて気持ちがいい。
 だが、二人は、さっとある場所で止まった。真正面に鹿島槍が岳が眺められる場所だ。
鹿島槍

 ゲレンデより近い位置なので迫力は満点である。二人だけでひっそりとした雪の斜面にいる。美しい山。パウダースノーを滑った快感。これは亮が最も願っていたシチュエーションだ。
「どこから見ても綺麗ね、この山」と伊代。感動しながら眺めている。
「ああ、見ての通り、二つの峰で出来ている。高い方の南峰は標高2,889 mで北峰は標高2,842 m。日本百名山の一つさ」
「日本百名山っって?」と伊代。
「あれ、ジャーナリストのくせに知らないのか。北から順に言うと、利尻岳、羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、大雪山、トムラウシ山、十勝岳、幌尻岳、後方羊蹄山、岩木山、八甲田山 、八幡平、岩手山、早池峰山、鳥海山、月山、朝日連峰、蔵王山、飯豊連峰、吾妻山 、安達太良山、磐梯山、会津駒ケ岳、那須岳、筑波山、燧ケ岳、至仏山、武尊山、赤城山 、男体山、日光白根山、皇海山、越後駒ケ岳、平ヶ岳、巻機山、苗場山、雨飾山、妙高山、、高妻山、草津白根山、四阿山、浅間山、両神山、甲武信岳、金峰山、瑞牆山、雲取山 奥秩父、大菩薩嶺、丹沢、富士山、天城山、白馬岳、でもってこの鹿島槍ヶ岳、それより南は・・」
「もういいわ。記憶力がいいのは分かっているって」と笑いながら伊代が制止。
「はは、ちょっとした趣味で知ったことさ」
「何度もここに来たことがあるのね」
「ああ、毎年来ている。そして、今年は君を連れてきた。ここまで連れてきたのは君にどうしても話しておきたいことがあってなんだ」と亮。伊代は亮の真剣な眼差しに、答えるように真剣な表情になった。伊代にも分かっていた。亮が何を言おうとしているか。それは伊代もずっと待っていたことでもあった。
 と、その時、バーンという音が鳴った。何の音かと思った。まるで大砲がなったような音だ。何かと思い音の聞こえた方向に二人は顔を向けた。すると、目にしたのは大量の雪がどっと押し寄せてくる光景だ。
 まずいっと思った。亮は伊代に「行くぞ」と大声で言った。二人は滑り出す。だが、雪崩の勢いは凄まじい。何とか追いつくまでに、ゲレンデの方に降りていけないか。このまま降りていけば、途中で緩やかなカーブになり、そこを曲がればゲレンデに辿り着く。雪崩もカーブの辺りで落ち着くはずだ。
 何とか、伊代の降りるスピードに合わせながら、降りていく。だが、背中のすぐそばまでに雪崩が近付く。と、その瞬間、亮は背後から衝撃を感じとった。首の辺りにすっと感じるものが、雪なのか、それとも、何か激しいものが。背中からなので分からないが、亮はそのまま体が動かなくなり、意識を失った。



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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 18:04:14 | Trackback(0) | Comments(0)

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