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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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人生教訓小説2 能あるさくらは葉を隠す 第2章 絶好調アイドル
東大卒キャリア官僚内定女性がアイドルに。

まずは第1章からお読み下さい。

デビューしてから3年が経っただろうか、上野さくらは、予想通り、引く手数多なトップ・アイドルになっていた。テレビでさくらの出るCMか番組がない日は、まずあり得ない。

上野さくらは、CMには、口紅などの化粧品、シャンプー、洗顔フォーム、チョコレートなどの菓子、海外旅行ツアーを宣伝するモデルとして登場。ブランド店の開業セレモニー、デパートのワイン披露イベント、新作映画の試写会などにマスコットとして呼ばれる。

テレビのクイズやバラエティ番組の司会アシスタントとして登場したり、ゲストとして登場して、にこにこ顔を披露する。台本通りの台詞を語り、アドリブでは、適当なおしゃべりをする。おしゃべりとは、まさにおしゃべり。おしゃれやダイエット、恋の悩みなどなど。10代から20代前半の若い女の子が共感しそうな話題が中心だ。

さくら、いや上原サユリが得意とする政治や経済の話題は全くない。そんなこととは無縁な女の子として振る舞わなければいけないからだ。それが売り物なのだ。読む書物といえば、漫画か携帯小説。そんな自分のファンの心理を理解するため、生まれてこの方読んだことのないファッション雑誌や漫画本や携帯小説を読みまくった。サユリにとっては苦痛であったが、それも役作りのため積極的にやった。

最近では、テレビドラマにも出るようになった。もっとも、コントかコメディで演技力は必要としない。かわいこちゃん、悪い言い方をするとパープリンギャルを演じるのだ。視聴者には、地でやっているとしか思えない演技をする。

デビューしてから、1年もしないうちに5千万円は返せ、その後、プロダクションにも、さくらにも、多額の儲けが入るようになった。

弟のケンジは、フロリダでの手術が成功、その後、現地の環境がいいということもあり、現地の高校に通い、卒業後、フロリダの州立大学に入学、健康で充実した日々を送っているという。

サユリは、家族には自分がアイドルをしていることは話していない。テレビや雑誌などに出るのだから、分からないはずもないのだが、そこは、うまく「さくら」と「サユリ」を使い分けている。神戸の実家に帰る時は、サユリはさくら特有のつけ毛を取り黒に染め直して短髪、メイクアップを取る。コンタクトを外し黒縁の眼鏡をかける。地味な服装、低めの声で落ち着いた話し方。両親のよく知る真面目で優等生なサユリに戻るのだ。これが彼女の地の姿。

さくらとは、全くの別人になる。テレビにアイドル「上野さくら」が出ているのを見ながらでも、サユリと同一人物であることに気付かない。両親には、東京では貿易会社に務めていると伝えている。田母神がアリバイのため知人の貿易会社に架空の社員を作りあげてくれた。

田母神は、サユリに実によくしてくれた。彼女を見込み、賭けともいえる大きな投資をして、大スターに育て上げてくれたのだ。そのおかげで彼女の弟の命は救われた。そして、彼女自身も、思わぬ自分の才能を開かせ、25歳という若さで、とてつもない財産を築くほどになった。貯金は、1億円近い。あのまま、財務省の官僚になっていたら、安月給で夜遅くまで働かされていたのかもしれない。

もっとも、田母神は強面の顔同様、実にやり手でしたたかな考えの持ち主だ。彼女なら、金儲けの道具になると見抜き、自らの利益のためにしたのに過ぎない。サユリは、田母神に感謝すると同様に警戒している立場でもあった。何度かプロダクション出入りしていて分かったこと、それは田母神が政界と黒いつながりを持っており、プロダクションの事業以外に田母神が持つ不動産やリゾート開発事業で便宜を図るような働きかけを行っている闇の世界のドンでもあるということだ。

そのこと自体、別段、驚くことではない。この世界の有力者なら、多かれ少なかれあること。サユリはある種の割り切りを持って接していた。

まあ、あと何年かすれば、自分の人気にも陰りが出てくるだろう。そうしたら、潮時だ。浮き沈みの激しい芸能界などにだらだらといるつもりはない。一攫千金である。そうなったら、田母神とはお別れだ。その後はどうしようかと、最近考え始めている。かわいこちゃんアイドルを辞めた後は? 今更、官僚にはなれないだろうし。だが、答えは見つかっていない。今すべきことは、その後のためにも、稼げるだけ稼いでおこうということだ。

半年前から、インターネット上で自分が司会をするトーク番組「さくらとトーク」を持つことになった。週に1回、原宿のスタジオにゲストを呼び、1体1でまったりとしたお喋りを披露、サユリは主に聞き手に回る。ゲストはいつも、年配の女優さん、作家、歌手、スポーツ選手、男優など。さくらとは、イメージ的にだぶらない相手を呼び、ゲストを盛り上げながらも、司会のさくらの個性も引き出す企画となっている。たちまち、視聴アクセス数は開始後、激増。さくらを支持する若い女性とさくらのおっかけをする若い男性の心を見事につかんでいる。

忙しくて、自分の実像とはかけ離れた演技をさせられるCMやテレビ番組よりは、このネット番組は気楽にこなせた。聞き手に回りながらも、自分で仕切れる楽しさがあったからだ。ネットというメディアだからこそなのかもしれない。

だが、アイドル・上野さくら、としての司会とお喋りは大いに活かす。そのイメージは崩さないように話しは堅過ぎず、でも、下品にならないように流していく。何気ない会話に巧みな話術が潜んでいることなど、視聴者は気付いてないようだ。

そんなある日、「さくらとトーク」にある意外なゲストが呼ばれると聞かされた。番組のディレクターがさくらに言った。
「今度は小津次郎さんです」
さくらは、それに対し、わざとらしく
「オズって誰?」ときく。
「ああ、知りませんか、そうだ、ここに小津さんの新聞記事があるので準備としてご熟読を」
と呆れ顔のディレクターが新聞紙を差し出す。
サユリは知らないはずはなかった。新聞やテレビニュースは毎日、目を通しているのだから、だが、「上野さくら」としては知らない振りをしなければいけない。

小津次郎とは、支持率が低迷する現政権に近々、選挙で取って替わろうとする最大野党民主党の若き党首だ。

第3章へつづく。
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テーマ:誰かに伝えたくなる、話。(*´ー`) - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 23:14:21 | Trackback(0) | Comments(0)
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