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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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人生教訓小説2 能あるさくらは葉を隠す 第5章 総理とトーク
東大卒キャリア官僚内定女性がアイドルに。

まずは第1章から第4章までをお読み下さい。

「さくらとトーク」で、阿冒総理をゲストとして呼んだ番組が始まった。

「本日のゲストは、日本の総理大臣、阿冒一郎さんです」
とさくらが紹介。年齢は60歳の老人で顔はあくどい。日本で一番不人気の男、次期総選挙で政治生命確実な男。支持率1桁代のじり貧。昨年の就任以来、失策、問題発言、閣僚の不祥事による辞任の連続。

田母神の注文で、この男の人気を盛り上げることをしろといわれたが、どうしたら、そんなことができるのか。国会での発言、提案する政策、どれも褒めようがない。ま、とりあえずは一般的な質問から。

「阿冒総理は、日本をどのような国にしたいと思っているのですか」
とさくら、にこにこしながらきく。
「誰もが幸せで希望のもてる国かな」
「国民はみんな幸せだと思いますか」
「そうだね、幸せだと思うよ。そうじゃないと思う?」
とゲスな顔をしかめていう。
「そうですね、でも、幸せでないとしたら、総理が幸せにするのでしょう」
とさくら。
「ああ、もちろん。最近は、みんなが幸せになるための給付金を配ることにした」
「一人当たり1万2千円が貰えるのですね」
「さくらちゃんは、うれしくない?」
「私にも貰えるのですね」とうれしそうに反応。さくらちゃんという呼び方に、少しむかっとしたが。
「そう誰もが貰える。働いている人も、働いていない人も、みんなが貰える」
とにこにこしながら言う。
「若い人の働けど貧しいといわれている状況はよくなっていくのでしょうか」
とさくら。
「うーん、よくしていかなければいけないけどね。たださ、若い者たちもなっとらんよ。定職に就かず、フリッターとかニートとかやって、親に世話になってばかりで、自立しないといかんよ」
といばった口調で言う。
「つまり、自己責任というわけですか」
とさくらはききかえす。
「ああ、そうだよ。甘ったれとるよ」
さくらは、超むかついた。こんな傲慢な考えの男が総理をやっているなんて!
「総理、でも、若者の就職状況が不景気で急激に悪くなっているのはご存知では。正社員採用の枠も減ってしまったので、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用に流れるしか生活していく道が閉ざされている現状をどうにかしないといけないと思わないのですか」
とさくらは、サユリになって問いつめた。
「自由な生き方をしたいと好きこのんで、そんな仕事を選んでいるんだろう。正社員だとつらいとかいって」
と総理もムキになって返す。
「今は20代前半の就労者の半分は非正規雇用なのですよ。全世代でも3割が非正規で。女性だけだと半分以上です。その現状が、個人が好きこのんだ結果だとお思いですか」
とサユリ。
「ええ、そんなにいるの」
と初めて知ったような驚きを見せる。
「もっと詳しい情報は、総理が任命された厚生労働大臣にお訊きになれば分かるのでは。今の日本の雇用状況は日増しに悪化する一方ですよ」
と上原サユリとして、怒りを込め話した。



番組を観ていた視聴者は、皆、上野さくらの変貌ぶりに驚いた。政治には無縁の彼女が、総理相手に、雇用問題を堂々と語るなんて。口調も変わっている。声も低めで、その上、舌知らずではなく、なめらかに話す。別人のようだ。

「いやあ、いやあ、さくらさんは、しっかりした女性だね。あなたみたいな若者がいることは、まあ、実にたのもしい」とやんわりとした口調で微笑みを浮かべながら阿冒は話す。

サユリも、はっとして我にかえった。しまった、つい熱を上げてしまった。

「ところで、総理、どんな趣味をお持ちなのですか」
とさくらに戻って、話題を変えた。

番組は、とりあえず終了。今まで観たことのないさくら、つまりは地の「サユリ」の姿を目にしたディレクターなどスタッフは驚きの様子だった。マネージャーの団十郎は、「おい、まずかったよ。いくら、総理がひどいこと言うからって、君の本性だしちゃったら」と注意をした。

だが、サユリは、気が立った状態のままだ。趣味の話しを始めた後から、ずっと表面的にごまかしてきたものの、自らの内に何かが急に目覚めた気分だ。とても抑えることの出来ない何かが。

芸能プロダクションに戻ると、田母神社長が待っていると秘書に言われ、社長室に通された。田母神は無表情だった。叱られ、首になるのではと覚悟したが、
「ま、阿冒が相手なら、あんなのも無理がないだろう」と一言いうだけで素っ気なかった。

とりあえず安心して社長室を出る。サユリは家に帰ることにしたが、社長室で脱いだマフラーを取り忘れていたことを思い出し、社長室に戻ろうとした。

秘書も帰っている。社長室のドアをノックしようとしたが、ドア越しから、田母神が誰かと電話で話している声が聞こえた。「総理」という声が聞こえたので、サユリは、気になった。ドア越しでよく聞こえないが、オフィス電話を使っているので、社長室の秘書の電話機の受話器を取り、内線三者通話機能ボタンを押し、こっそり会話を聞こうとした。よく秘書が、電話会議のメモをとったりするのに使っている機能だ。サユリは、携帯電話を取りだし、音声録音機能ボタンを押し、自分の耳と共に携帯電話を受話器に近づけた。
「総理、こうなったら、いよいよ、奥の手ですね。任期切れも近い。私としても、小津が総理になって貰っては困る」
「ああ、準備は万端に整っている。検察に小津の公設秘書を政治資金規正法で逮捕させる。容疑は、しっかりでっち上げる。大騒ぎになれば、これでこっちに運が向いてくる」
「最後の手段ですね。国策捜査だと思われても、やるしかないということですかね」
「ああ、この際、きれいごとなどいってられんよ。それからな、あんたのところの小娘、わしはとんでもない恥をかいた。ただじゃすまんよ」
と総理、声を荒げて言う。
「その辺の処理はお任せ下さい。自分で育て飼い慣らしたものの処分は、自分でするのがわたしの流儀ですから」
と田母神は、さらりと答えた。

第6章へつづく。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 22:25:49 | Trackback(0) | Comments(0)
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