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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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平和教訓小説「平和という名の付く船」 第3章 告知
平和をモットーに世界一周航海をする船が、自衛隊の護衛を受けることに。次々と迫り来るハプニング。その時、乗客たちは!?

まずは第1章第2章をお読み下さい。

9条大会パーティが、佳境を迎え、そろそろお開きになろうとしたとき、タツミは立ち上がり、ステージに上がった。手にマイクを持ち話し始めた。
「みんなさん、聞いてください。これから大事なお知らせがあります。これからの航海において大変重要なことなので、解散する前にしっかり聞いて、心がけていただきたいことです」
代表のタツミが突然、出現。本来のリード役が、ずっと隅っこにいて、突然、深刻になって壇上に上がる。乗客たちは、何事かと思って、タツミを見つめる。
「これから本船は、ソマリア沖のアデン湾を通過します。ニュースなどでもご存知の通り、この海域は昨今、海賊の出没などで誘拐・強盗などの被害が多発しているところです。従いまして、皆さんの安全のため、自衛隊の護衛を受けることとなりました。これから、その護衛中の間の注意事項などについて、只今乗船されております海上自衛隊一等海曹 田之上寿朗さんよりお話をさせていただきます」
田之上はステージ上がる。タツミからマイクを渡され話し始めた。
「皆さん、初めまして。私が田之上です。これから、護衛中の航海について説明いたします。これから数日間の間、ソマリア沖を航行する間、この船は、他の商船と一緒にコンボイを組み、そのコンボイを我々が護衛させていただくことになります。この船には、私を含め自衛官がもしものため、武装して数名ほど乗り込みます。航行中、日没後は、デッキから外に出ず、何か緊急事態が起こりましたら、各自の客室に戻り、安全が確認されるまでけっして外に出ないでください」
「ちょっと待ってよ。そんなの無茶苦茶よ。私たちの船は、平和の船よ。どうして、自衛隊に守られなければいけないの。ワールド・ピースは自衛隊派遣に反対の立場のはずよ。海賊からの護衛なんだから、海上保安庁が護衛すべきなんでは」
と大会の進行をずっとタツミに代わってしていた副代表のヨシコが憤って叫んだ。彼女は、バリバリの平和運動家だ。田之上を睨みつける。
「これは君たちの団体のツアーを請け負っている旅行会社が決めたことだ。乗客の安全を考えてのことだ。つまり、君たちの社長が決めたことだから従うのが当然だろう。それから、海上保安庁では、今回の航海の警備は無理だ。過去には実績があったが、かなりの外洋で、期間も長くなる。それに海保は警察だ。ソマリア沖は、内戦でまともな統治機構のない国の沖合だから、警察行動をする上で必要になる管轄国の了承を得られない。そんな場合は、自衛隊が出動するのが適当だ」
「そんな、それって軍隊として動くってこと。変よ。憲法で禁止されている行動よ」
「とりあえず、政府は認めている。国民を守るための義務として決めたことだ。社長も同意した。海賊に襲われたくないだろう。安全な航海をしたいだろう」
ヨシコは、今度はタツミをにらんで言う。
「ひどいわ。タツミさん。知っていて黙っていて、9条大会なんてさせて。私たちは平和団体よ。自衛隊に守ってなんて貰わなくていいわ。そもそも、ソマリア沖の海賊って元は貧しい漁民だった人達っていうじゃない。自衛隊を送るより、援助をしたりすべきよ」
「分かってくれ。やも得ないんだ。とても危険なところなんだ」
「じゃあ、信念はかなぐり捨てろっていうの」
タツミは言葉に詰まった。


「人殺しの軍隊なんていらない。私たちは武器なんて絶対使わない」
と突然、ミクが割り込むように叫んだ。それに続き、その場にいた乗客の中から次々と
自衛隊派遣反対」「自衛隊に守られなくても大丈夫」「自衛隊は出ていけ」とシュプレキコールが起こった。
ヨシコが、そんな雄叫びを盛り上げるかのように涙を流して叫んだ。
「みんなで反対しましょう。その声を社長に届けましょう。そして、護衛を撤回しましょう。何ならコースの変更も申し出ましょう」
田之上は、困った表情になって言った。
「全く、何も分かっていないんだなあ。いくら君たちが9条を大切にして平和主義者だとかいっても、相手は容赦しない。金品を盗むため人殺しだって辞さない。貧困が原因だといっても海賊は海賊だ。これから、どうしてもこの海域を通らなければいけない。身の安全のために我々を頼りにして欲しい」
タツミも困った顔をして、
「いいか、俺もこの決定には疑問を感じる。だけど、仕方ないんだ。代表として、ツアー参加客の身の安全をしっかりと保証してやらないといけない。頼む、分かってくれ。ほんの数日の間だけだ。俺たちの平和を願う信念は変わらない」
言った。タツミの困った顔を見て、ヨシコと他一同は静まった。何とか、なだめ役として、その場をおさめようとした。
「ひどい、みんな嘘つきよ!」とミクの叫び声。そして、その場にあったビールの入ったコップを持つと、田之上に向かってふっかけ、ビールを浴びさせた。田之上は、もろに顔全体にビールを浴びた。
タツミは、ミクの手を押さえ、
「何てことするんだ!」と叱りつけた。あまりの大胆な行動に拍子抜けした。ヨシコも驚き田之上に申し訳なさそうに、ハンカチを渡した。田之上は、ハンカチを受け取り、さっと顔を拭いた。
「いいか、みんな。私と私の仲間は自衛官だ。みんなとみんなの親御さんが払う税金で食わして貰っている。だから、みんなを守るのは当然の務めだ。私たちを気にいらんのならそれでも構わないし、それでも、仕事はしっかりさせて貰う。それにな、この仕事は私が請け負った中では最高に誇らしい任務だ。自分たちを忌み嫌い、存在さえ否定する者達を命懸けでお守りする任務だ。この世にこれ以上、誇らしい任務はない。しっかりやらせて貰うぞ」
と声を張り上げ、言い放つ。会場はさっと静まりかえり、乗客たちは唖然とした表情で田之上を見つめた。

第4章へつづく。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 00:12:59 | Trackback(0) | Comments(0)
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