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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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平和教訓小説「平和という名の付く船」 第6章 データボックス
平和をモットーに世界一周航海をする船が、自衛隊の護衛を受けることに。次々と迫り来るハプニング。その時、乗客たちは!?

まずは、第1章から第5章までお読み下さい。

タツミは緊張した面持ちで、操縦桿を握っていた。自衛隊の到着が間に合うか。とりあえず、その前にこの船をできるだけ自衛隊のいる位置に近付かせようと思った。お互いが接点となる方向へ舵を回す。護衛艦では間に合わないだろう。だが、ヘリなら何とかなるかもしれない。

海賊、いや、ただの海賊ではない、きっと国際的な窃盗密売組織に違いない。我が国の国宝を盗み、それをどこかの国に売り払おうとしているのだ。許されることではない。なぜか、かつての心が甦ってくる。国を守ろうとする気持ち。

どうしたらいいのだろう。敵の船が現れたら。この船では太刀打ちできない。武器はまともなのがない。軍艦ではないので、大砲とか機関砲があるわけではない。せいぜいできて体当たりぐらいだ。体当たり? 

そんなことをしていいのか。同じことを数年前に考えさせられた。それは、アデン湾ではなく、東シナ海であった。こんな旅客船ではなく、大砲と機関砲のある船で、操縦桿を握っていた。それも艦長が持ち場を離れたときに、やも得ず自分が操縦の一手を担っていたときに。日本国領土の三角島を自国の領土だと主張する隣国の活動家の上陸を阻止するため艦を操縦していた。上からの命令は「もめごとを起こさず、対処しろ」であった。

だが、相手の船は容赦しなかった。武器こそ持っていなかったが、モーターボートには10人ほど人が乗っていて、是が非でも島に上陸するつもりであった。何とか阻止しようと、接近したりして妨害しようとしたが、相手は、小回りのよさを活かしてかわし、突き進もうとする。

ついには、艦の手が届かないところまで離れ、そして、上陸阻止できる浅瀬前ぎりぎりのラインまで来ていた。どうしたらいいのか、海上自衛官航海士として決断しなければいけなかった。領土侵犯を許してはならない。国土を守るのが自分の務めだ。常にそういい聞かされていた。だから、突き進んだ。そして、モーターボートは・・・

あ、モーターボートが見えた。左前方向だ。あの時よりも大きめで装備がしっかりしている。予想通り単なる海賊ではない。乗っている連中はバズーカ砲を含め武器を持っている。かなり手強い。よし、それならば、あの時と同様に突き進むぞ。今度は迷いがない。速度を上げ、モーターボートに対し、船の左舷側面をぶつけようとした。それくらいしかこっちの対抗できる武器はない。だが、相手はさらりとかわす。そして、持っているバズーカ砲を自分のいる操縦室に向けて狙いをつける。

やばい、と思いタツミは身を伏せた。突然、ドカーン、という音が響き、窓ガラスが割れ、火花が散った。室内に火が広がった。タツミは消化器を出して、急いで火を消した。何とか消し去ったが、操縦室は機能停止、船は緊急停止状態になった。

これではかなわない。米兵から取り上げた機関銃を持って、甲板に向かった。使い方は、今でも覚えている。この際、こうやって戦うしかない。相手が甲板に乗り込む前か、乗り込んだとしても、船内に入る前に阻止するのだ。

甲板には、田之上もいた。同じく機関銃を持っている。モーターボートの奴らに機関銃を向ける。だが、相手側も機関銃を持っている。数段、パワーのある機関銃だ。そして、バズーカも。これでは、2人が撃ったとしても、すぐに撃ち返され蜂の巣にされてしまう。

と、その時、上空から轟音が。あ、ヘリコプターだ。それも日の丸がついている。やったぞ。モーターボートの連中もヘリコプターを見上げる。バズーカ砲を持つ男が、ヘリに狙いをつける。と、そのとたん、バババ、とヘリから機関砲が放たれる。一気に、モーターボートの連中は撃ち砕かれ、そして、ボートも同様に。一気に乗っている奴らを呑み込み海中に沈んでいった。

「やった、助かったわ」と背後で声がした。タツミが振り向くと、そこにはワールド・ピース副代表のヨシコがいた。彼女は、恐ろしく嬉しそうだ。目の前でボートに乗った連中が血飛沫をあげのたまう光景を見ていながら、それで助かったんだという思い出一杯のようだ。ホールでの命拾いの体験の反動か。9条護持、絶対平和主義者の面影が一挙に吹き飛んだ姿だ。

その後に、ミクが現れた。相変わらずのゴスロリ・スタイル。顔は憎しみで一杯だ。そして、「ひどい、人殺しだわ、自衛隊なんて悪魔だわ」と怒り心頭だ。あまりにも残酷な光景を見せられ衝撃を受けたようだ。そして、その後ろにゴンゾウが。
「全くそうだな、こりゃひどすぎるぜ。何もあんなにまでしなくてもよう」と平然と言う。

タツミと田之上は、彼らの様子に呆れてしまった。衛星電話で護衛艦に連絡を取った。もうすぐ、この船のいるところまで到達する見込みだと。

とりあえず一安心だ。船がこんな状態になってはツアーはここで中止だ。会社にもさぞ大きな損害が出よう。それは何とか保険で賄えるかもしれないが、自衛艦に、この船が助けられたという事実が世に広く知れ渡ることの方がはるかに大きな損失になる。この平和団体の存続意義が問われる結果に。

田之上が、タツミを倉庫室に誘う。一体どうしたのかというと、どうしても米兵たちのことで腑に落ちないことがあるので、もう一度、あのコンテナを確かめたいとのことだった。


ボックスには鎌倉で盗まれた仏像が入っていた。どうやら横須賀の海軍兵士が企てた窃盗で、そのことがばれるのを防ぐため、海軍が海賊に見せかけた部隊を送り窃盗組織に渡る前に先手を打って自分たちで奪い返そうとしたという結論になっていたが、田之上はそれにどうも納得がいかないようだ。

田之上は、今、拘束している米兵6人(内2人は重傷)の様子が、どうもおかしいと察してた。仏像以上に何か裏があるようでならない。それを素知らぬ振りをして隠しているようにみえる。一連の盗難及び密売事件は、逮捕した隊員が吐いて発覚したとのこと。

田之上は、鉛のコンテナを丹念に調べる。そして、
「ほ、ほう思った通りだ」と言いながら、黒いカバンを奥の方から探し当て取り出した。
「一体なんです、それ?」とタツミ。
「噂に聞いていた米海軍の機密データボックスさ」
「機密データボックス」
「ああ、緊急時に基地で大惨事が起こって、通常のオペレーションが機能しなくなったときに対処すべく、基地の内部情報、世界中の海軍基地のネットワーク機能などの詳細を収めたデータボックスさ。原子力潜水艦や空母の構造や機能、核兵器の情報までも網羅しているはずだ」
「え、そんなものをこんなところに」
「おそらく、これを盗んで、どこかの国の情報機関かテロ組織に売り飛ばす手はずだったのだろう。それを取り戻そうとして米兵は、海賊の振りをしてこの船に乗り込んだんだ。仏像以上にこれを取り戻すことの方が重要な使命だったに違いない。何せ、これが敵に渡れば、それで米海軍、いや米国の防衛機能は筒抜けだ。相手に核爆弾を作らせる技術を与えるかもしれないほどだ」
「しかし、そんな機密が入っているボックス。盗んだとしても米海軍のことだ。簡単にデータを盗めないような機能をつけているはず」
「いやあ、そこがどうやら面白いところでな。このデータボックスは暗証番号とかでデータを開示出来るようになっていないらしいんだ」
田之上はそういいながら、カバンを開け、中にある真っ黒な画面とキーボードをみせつける。起動ボタンを押す。画面は「アクセス不可。場所不適合」と表示。
「暗証番号ではなく、場所ですか?」
「そうだ、暗証番号だとそれを知っている者でしか使えないし、それを知っている者が捕まって拷問でもされて吐かれたらお終いだろう。要は使える場所を限定しているのさ。ボックスの中にGPSが入っており、あらかじめ決められた場所でしか起動しないようになっている。つまりは基地内の特定の場所のみということ。起動すれば、すぐにデータを閲覧しているところを特定できる。ならば安全だろう」
「はあ、だとしたら、盗む方も何のメリットがないのでは。基地を離れてしまっては、使えないんですし」
「いやあ、噂によると米海軍の基地で、唯一それが基地外でも起動できる場所があるんだと。それも米軍側に閲覧している場所を特定されずにすむ場所がな」
「え、そんなところが?」
「インド洋の基地、ディエゴガルシアを知っているだろう」
「はい、英国領で米海軍基地があるところで、かつての島の住民を追い出してまで1960年代、アメリカが建てた島の基地ですよね。湾岸戦争、アフガンやイラクでも、そこから軍隊を派遣している重要な拠点ですよね。そこがですか?」
「ああ、意外にも盲点があってな。そこは、周囲を海に囲まれている孤島だ。おそらくGPSの特定もやや大雑把になっているのだろう。しょっちゅう、周辺海域に出ることもあるので、特定しすぎるとかえっていざというときに難儀があるだろうと考えてな。何たって、軍人しか上陸できない島だ。そんなに警戒することもない」
「じゃあ、ディエゴガルシアに近付けば、そのデータが閲覧できるということで?」
「ああ、基地から100キロ近く離れたところでも可能かもしれない。恐らく、さっきの連中は、仏像よりもこのデータボックスが目当てのはずさ。ただの盗賊団にしてはボートと武器の装備が良すぎた。これを盗んでインド洋に行って、取れるだけのデータを閲覧するつもりなのだろう。一度、起動しさえすればボックスからデータは好きなだけいただける。海軍が追跡するだろうが、海上の場所が特定された頃には、データはすっかりどこかに転送され後の祭りだ」
タツミは、なるほど、と思った。これで一連の騒動の成り行きも理解できる。船の船長と操縦士を買収させても、盗みたいもの。それもこの海域で盗賊の振りをして盗みたいしろものというと、見事に説明がつく。売るとなると、仏像よりも、はるかな高値で売れる。
「で、どうするんですか、田之上さん?」
「うーん、そうだな。このことに我々は気付かない振りをしておこう」
「どういうことです。米軍に知らせないのですか?」
「そんな必要があるのか」
「いや、同盟軍でしょう」
「同盟軍? だけど、我々は、今度の一件を何にも知らされてなかったよ。米軍はな、同盟のふりしながら、影で何をしている分からず、いつも我々を監視しているような連中だ。お前も自衛隊にいたのなら、よく知っているだろう」
「じゃあ、自衛隊で保持を?」
「まあな、これの利用法はよく考えてみるよ。仏像を盗む隊員がいたこと、海賊の振りして日本の民間船に侵入した件などどう使わして貰うか。護衛艦も帰国の途に就くときは、インド洋のディエゴの近くを通過するからな」と田之上、得意気に話す。
「え、ちょっと待ってください。米海軍の情報を自衛隊が盗み見るなんて」
「使える情報はいただけるだけいただく、それもせっかくそっちから飛び込んできたんだ」
タツミは、ショックであった。田之上が、そんな考え方だったとは。別に機密を盗むということを問題にするつもりはない。だが、その機密の中には核爆弾の構造なんてのも入っているかもしれないのだ。場合によっては核爆弾さえ作れてしまう。絶対にしてはならないことだ。
「いやあ、恐れ入った。我が自衛隊が、そこまでしたたかなものの考え方をしていたとはね」と倉庫室のドアから声が聞こえた。聞き覚えのある声。

最終章へ続く。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 21:01:05 | Trackback(0) | Comments(0)
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