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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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環境教訓小説 「原発ターミネーター」 第2章 思い出の丘
原発建設阻止の活動家の前に未来人現れる。その正体と目的とは。

まずは第1章をお読み下さい。

その翌日、洋二と仲間の自宅と活動拠点の事務所に一斉に強制捜査が入った。警察官がどっと押し寄せ、あらゆるものを捜査資料として奪い去った。カヌーもオウルと一緒に押収された。

洋二は重要参考人として呼び出された。弁護士を呼ぼうとしたが、その前に力づくで引っ張られた。警察のいう緊急時の超法規的措置という口実である。公務執行妨害も辞さないかんじなので、とりあえず警察署に連れられることになった。

警察の取調室で、刑事が言った。
「昨日のクレーンへの攻撃、心当たりないか?」
「あるわけないでしょう」と洋二。
「ああ、そんなこと分かっているよ」と刑事。
「えっ?」と意外な答えに洋二は驚いた。
「あんな攻撃をする能力などお前らのような活動家にはないことはよく分かっている。あれは、かなり強力なものだ。だが、それでありながら、弾薬などの痕跡が全くない。まるで空気銃で撃ったかのようだ」
「え、あんなものを空気銃で。そんな鉄のクレーンの柱をぐっさりですよ」
「ああ、ふつうなら、切断面や、周囲の海中に何か残っていいようなものなんだが、それが衝撃だけで打ち砕かれた感じなんだ。こっちで使われた武器の分析をしているんだが、さっぱり分からない未知の兵器としかいいようがないという結論でな。まさかそんなものをお前ら程度の連中が造られるはずもないし、ましてや、自分たちが真下にいる状態で、そんな危ないことするはずないもんな。ただ、誰か心当たりはないかなと思って呼び出した次第だ。ん、どうだ?」
と刑事。
「全くありませんね」と洋二が答えた。
「そうか。仕方ねえな。だけどよ、変なことが立て続けに起こるな。一昨日、お前らが瀬戸内電力の田辺社長の家に押しかけたら、そこの身籠もった娘さんが倒れ込んだだろ。それ以来、昏睡状態になってしまい大騒ぎだ。病院では警備が不十分だというんで、社長の家に病院の設備持ち込んで医者もガードマンも常時つけて看護している状態だ。なぜ昏睡状態になったのか、どんな病気にかかっているのかも不明。だから、こっちとしても神経質にならざる得なくて、心当たりを片っ端から当たっている次第だ」

それから1時間後、洋二は釈放され警察署を出た。重要参考人であることには変わりはないが、容疑者にするには不十分という立場にされた。あの小夜子とかいった女性が、あの時、倒れて以来、昏睡状態とは気掛かりだ。自分たちが押しかけたせいで、ショックを受けてのことか。だとしたら、罪悪感を感じる。

と、その時、携帯電話が鳴った。


洋二は携帯電話を取り出した。
「もしもし、洋二ですが」
「今から、私が指定する場所に来てくれないか」
と年老いた男性らしき声が耳に響いた。
「は、何です突然? あなたはいったい何者で」
「とにかく来てくれ。君の知りたいことを教えてやる。場所は、あなたが初めて女の子とキスをした場所だ」
「は? 何を? どうしてそんなことを知っているの?」
と洋二が訊いた途端、電話が切れた。

洋二が初めて女の子とキスをした場所とは、寿島と対岸の田浦半島が遠くから見渡せる丘だ。洋二が10年以上も前、まだ高校生だった頃、初めて出来た彼女とデートして訪ねたところだ。二人であまりにも美しい景色に感動し、ムードに浸っているうちにキスをしてしまった。その後、彼女とは結婚の約束までしたが、悲しいことに彼女は白血病にかかり若い命を落とした。実に苦い思い出であると共に、彼女との思い出が自らにぐさりとのしかかり、そのキスの時に見た美しい景色が頭から離れず何としても破壊から免れたいと思い、原発建設阻止の活動を始めることにした。

しかし、この場所は、彼女と自分だけの秘密の場所だったはず。誰にも、この場所のことは話していない。どうして知っているのか、それに電話をかけてきた老人は何者だったのか。なぜ自分に接触してきたのか。何だか不気味だが、こうなったら行こうと思った。自分の知りたいことを教えると言ったが、もしかして、昨日のクレーン攻撃の手がかりになることでも知らせてくれるというのか。

丘に着いた。寿島と田浦半島の見渡せる思い出の場所。ここは雑木林の中のほんの開けた場所であり、海岸の崖に面する丘の上にあり、周囲からは、こんな風景の見える場所にはみえないところだ。ここに立っていると白血病で死んだ彼女の思い出が甦り悲しくなり涙がこぼれてくる場所でもある。だから、そんなに滅多には来ない場所でもある。

「やあ、来てくれたか」と老人の男の声。洋二は、はっとして振り向く。
老人の顔を見て思わずぎょっとした。
「あ、あなたは、どうしてここに、どうして僕を呼んだのですか」と。
 すると、老人は答えた。
「はは、思った通りの反応だな。私が君の良く知っている男に似ているから、そう言うのだろう。今から私が何者で、なぜその人物にそっくりで、どうやってここに、どんな目的で来たのかを話そう」
「そっくりって、あなたは田辺社長ではないのか」と洋二は、さらなる驚きを込めて言った。だが、瀬戸内電力の社長にそっくりのその男、よくよく見ると一昨日、顔を合わした田辺吾郎より少し背が高いように見える。声も少し違う。顔付きは似ているが、微妙に違う点もある。しかし、そっくりだ。まるで双子か、せめて兄弟かと思えるほどだ。
「田辺ではないが、血はつながっている者だ」
「じゃあ、双子の兄弟?」
「いや、私は田辺吾郎の孫だ」

第3章へつづく。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

原発 | 17:45:51 | Trackback(0) | Comments(0)
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