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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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翻訳者小説「風と共に去らないでくれ」 第5章 予感
映画で国家の危機を救えるか。

まずは第1章から第4章までお読み下さい。


この映画のどの部分が反国家的で戦意低下を招くというのだ、と問い質した。
まずは、アトランタで戦死者リストを街頭で配るシーン。

スカーレットとメラニーは、アシュレーの名前がないか気になったが、リストには見当たらずほっとする。しかし、知人には息子や兄弟を失った者が数多くいて、それをほっといてはおけない心優しいメラニー。兄を失った青年が、怒り狂って自分が志願して、北軍をやっつけると叫ぶ。それに対しメラニーが、これ以上、ご両親を悲しませることがあってはいけないわと、留める。
 
「国家総動員で聖戦を挑んでいる時代に、戦いを欲する青年を引き留めるような内容はふさわしくない」と小野田は檄を飛ばした。聖戦とは、中国大陸のことだ。すでにかなりの犠牲者が出ている。日本では兵士の多くが。中国では民間人の間にもだ。そして、そのことが日米の緊張を増幅させる結果を招いてさえいるのだ。

次に、病院で兵士の看病をする場面。看護婦をするメラニーとスカーレット。献身的な看護をするメラニーの元で思い出話をする傷ついた兵士達。
腐った足を切断しなければいけなくなった兵士がいて、必死で拒否する。そして、物資不足から麻酔投与なしで足を切る手術をすることになった。男は必死で「やめてくれ」と叫ぶ。スカーレットは、そんな光景に耐えられなくなり、病院を抜け出す。

病院のベッドが足りなくなり、路上に怪我人が放置され、包帯も薬品もない状態。

アトランタは、その間もひっきりなしに北軍からの砲撃を受ける。スカーレットは、アトランタを去り、故郷のタラに帰る決意をする。

火に包まれるアトランタをレットの助けを借り馬車で脱出する。抜け出した後、荒廃していく南部を尻目にレットはスカーレットにこう告げる。
「南部の最後を見ておけ、これを後世まで語り継ぐんだ」
それに対し「私たちをこんな目に合わせてひどい。レット、あなたは軍に入らなくてよかった」とスカーレット。

「こんな場面を見せられるか」と小野田。
「でも、これが、戦場の実態だろう」と達朗。
「今、国民は、恐れを持ってはいけない時だ、まるで戦争で傷つき負けて落ちぶれていくことを予感しているようで、けしからん」と小野田。
「予感が、その通りになったらと考えたことはないのか」
「何?」


「僕はアメリカに住んでいたことがある。だから、日米の国力の差は歴然としていることはよく分かっている。知っているか、アメリカでは年間数百万台も自動車が製造され、路上をひっきりなしに走っている。労働者だって車を持っているのは普通だ。日本では一部の金持ちしか自動車なんて持てないだろう。おまけに資源を握っている。我々は石油をアメリカから輸入していた。それをすでに断たれているのだ」
「それが何だ、我々には大和魂がある。たとえ戦争になっても、負けやせん」と小野田。
「あんたの言っていることは、南部の紳士諸君が開戦前に発していた言葉と同じだよ」
そのとたん、小野田は我にかえって言った。
「言葉だけでは勝てないと言うことか」
「そう、いざとなったら、大和魂より火力の差だ」と達朗。レットの台詞を引用した。
「おい待て、この映画は、日本の未来を予想しているというのか」
「そうだ、もし戦争をしたら、日本は確実に南部のようになる。それだからこそ、この映画を放映したいんだ。この映画を観ただけでも国力の差は歴然としていると気付かされるだろう。全編総天然色で4時間近くある。豪華な衣装に装飾品、舞台セット、特殊効果も見られる。相当な資本が費やされているのは間違いない。何よりも、すごいのは俳優人の演技力だ。凄く説得力のある演技をしている。アメリカ人はよく個人主義だというが、この映画を観る限り、この映画の制作には多くの者が関わり、最高の作品を制作するため個々の実力の総結集がなされたことが見て取れる。普段は個人主義だが、共通の目的を持った時の団結力といったら凄まじいものがあるんだ。それがアメリカ人だ」と達朗。
しばらく沈黙が続いた後、小野田は言った。

「そうか、分かった、これらのシーンはカットしないでおこう」

検閲作業は終わった。ラブシーンを含めた性的に卑猥とされる場面の削除だけに留め、さっそく、フィルムの字幕付け作業が始まった。字幕付きのフィルムをプリントするのだ。
これは、手間のかかる作業で、フィルムに字幕の台詞の傷をつけていくのだ。一コマ一コマに台詞の流れる場面のフィルムに文字の傷を焼き付けていく。1秒で24コマ、それが、1分間だと1440コマ、それが4時間だと34万コマ以上になる。

その作業のために1週間が過ぎた。

字幕付きのフィルムを見直した。キスシーンがカットされたのは残念だが、何とか伝えたいメッセージは伝わる。つまりは、こんな映画を制作した国と戦争なんてするなよと言うことだ。

だが、どうも達朗には腑に落ちない場面があった。最後の台詞だ。
「After all, tomorrow is another day.」達朗は、結局、この台詞を「明日は全く違った日になるはず」と訳をつけた。まあ、言葉通りだが。

傍若無人に振る舞い、結婚した後もアシュレーとの想いを断ちきれず、そのことでレットとの仲が険悪に、その上、最愛の娘を失うという不幸に見舞われ、メラニーが死に、アシュレーと一緒になれるかと思ったら、アシュレーはスカーレットのことなど最初から愛していなかったことを知る。ついには、レットへの愛に気付いたが、レットには愛想をつかされ、独りぼっちに。

大切なものを次々と失い絶望の果てにスカーレットは、故郷のタラに帰ることを思いつく。そして、そこでレットを取り戻す方法を考えようと決意する。その時に放つ言葉だ。

これは何を訴えたいのか。というよりか、何かを予感しているような気がしてならない。

それが、どうもよく分からない。まあ、そんなことはどうでもいい。この映画をお偉方に見せ、考えを直させ、そして、多くの国民にも見せ、いきり立った気持ちを変えさせるのだ。無意味な続けるべきではない。ましてや、勝ち目のない戦争に突入することなどやめるべきだ。


最終章へつづく。
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テーマ:歴史小説 - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 23:45:53 | Trackback(0) | Comments(0)
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