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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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アレルギー小説「日本男児をやめられない」 第1章 ラテックス・アレルギー
アレルギーといったら何でしょう。分かりやすくいうと、体に外部の物質が入った時に、拒否反応を示す現象です。医学的にいうと免疫反応といわれています。

体には常に外部からの物質が入り込んでいますが、ある限度を超えると、身体が受けつけなくなり、そのシグナルとして、様々な苦痛を伴う現象が、襲ってくるのです。

「アレルゲン」と呼ばれる外部物質は、食べたり、体に身につけたり、空気と共に吸い込んだりするなどして、入ってきて、免疫反応を引き起こします。また、電磁波のような物質ではないものが、体に過敏な反応を起こすこともあります。

これから、お届けする軽小説集は、アレルギーをテーマにしています。日常に潜むアレルゲンによって、思わぬ生活や状況を強いられ、その経験を通して変化していく人々が主人公です。

さて、まずは、着るものが原因のアレルギーから、不思議な体験をする男が主人公です。軽小説スタイルで。





ジャック・シャルボノは、カナダはケベック州モントリオール生まれのモントリオール育ちのカナダ人男性である。そして、この地方に多くいるといわれるフランス系カナダ人、英語でフレンチ・カナディアンといわれる人々の一員であった。

幼い頃から、家庭ではフランス語を話した。両親と親戚は、皆、フレンチ・カナディアンだったからだ。だが、学校では英語を話した。友人には、英語を母国語とするイギリス系のカナダ人とフランス語を母国語とするフレンチ・カナディアンが半々であった。

したがって、彼にとっての母国語は、英語とフランス語なのである。いわゆるバイリンガルであったが、隣のオンタリオ州のトロント大学に入ってからは、さらに一言語が加わり三カ国語を話せるトリンガルとなった。その言語とは、ジャパニーズ、日本語である。

きっかけは、大学時代、知り合い恋に落ちた日本人女性の留学生、渡部百合子に出会ってからだ。彼女は、もちろん英語が話せたが、彼女と彼女の母国語で直接話しができるようになりたいという想いから、日本語を専攻科目として学ぶことにした。百合子の助けも借り、日本語をどんどんマスターしていき、ついには百合子にさえ「日本人以上に日本語が話せる」と言われるほど上達し、大学の日本語学科を主席で卒業。卒業後は、英語、フランス語、日本語の間の翻訳と通訳をトロントで行うことにした。そして、百合子は、大事な仕事のパートナーとなり、ついには、プライベートでもパートナーとなることになった。

結婚に際しては、百合子の父親の泰蔵が、飛行機で来て結婚を承諾し、こじんまりとした教会での少人数の結婚式に出席してくれた。百合子の母親は数年前に亡くなっており、泰蔵は一人っ子であった百合子にとっての唯一の肉親である。

百合子の故郷を訪ねようと思ったが、仕事が忙しいことと、飛行機恐怖症だったジャックは、日本を訪ねることはなかった。妻の故郷を訪ねたことがないなんて情けない。飛行機恐怖症ぐらい克服して日本に行くべきだと思っていた。何せ、せっかく日本語が話せるのに、妻か、カナダに住むその他の日本人相手にしか使ったことがないとは情けないと思った。

だが不思議なことに、妻の百合子がジャックに日本行きを薦めなかった。というのは、百合子の地元は日本の中でも、保守的な土地柄で、外国人で白人のジャックを地元の人々は歓迎しないだろうと言うのだ。自分がカナダ人と結婚したことを町の人がよく思っていないという知らせを父や地元の友人から電話や手紙で聞いたという。歓迎されない上、漁業が主要産業の田舎町だし訪ねたところで退屈だろうと語った。百合子自身、そんな土地柄を嫌って、カナダに留学、大学卒業後、移住を決意したほどだという。

まあ、それなら仕方ないと思っていたが、結婚三年後、突然、夫婦で日本を訪ねなければいけない事態になった。それは、百合子の父親が、体調を崩し入院、退院したものの仕事を休み静養するようになったという。近所のおばさんが、時折、様子を見に行ったりするのだが、やはり六十近くで、一人暮らしの身の上というのが影響して心が沈んでいる感じだから、一人娘の百合子が一緒にいてやって、元気になるようにしてやれないかと連絡が入った。

さすがの百合子も心配でならなくなり、それならば、ジャックも一緒に行こうという決心をした。翻訳の仕事は、日本に移ってからでも、インターネットに接続する環境さえあれば十分続けられるし、調べたところ、田舎町だが、その点は問題ないとのことだ。

ジャックは、十数時間のフライトを必死に耐え何とか日本は関西国際空港に辿り着いた。空港から、電車を乗り継ぎ、百合子の地元、あわい町に着いた。中国地方の日本海に面した海岸の漁師町だ。百合子の家は、漁港近くで、窓から広々とした日本海が眺められた。泰蔵は、久しぶりに百合子とジャックに出会えたことで、機嫌良く二人を迎えてくれた。
泰蔵は地元の漁師である。

とりあえずは、百合子が昔から使っていた部屋を割り当てられた。さっそく家族で水入らずという感じで、付き合うことにしたが、泰蔵がかなり弱っていることは、ジャックから見てもよく分かった。トロントでの結婚式の時に顔を合わした頃より、ずっと痩せて顔に精気がない。百合子と背丈は同じぐらいで小柄なのだが、それがもっと小さく見えた。歳は五十八歳、まだ現役引退には早いという。なので、元気を取り戻したら、是非とも、漁師に復帰したいというのだが、もっとそのためには静養しなければならないし、元気づけなければいけない。ジャックは義理とはいえ息子として、どうしたらいいのか思索した。何とか力になれないか。ジャックは泰蔵のことを「お父さん」と百合子同様に呼んで接した。

この町に着いてから一週間が過ぎた。予想していたことが起こっていた。それは、ジャックが「外人」とひそひそ呼ばれることであった。ひそひそとジャックのことを話しているのに、ジャックと顔を合わしても、積極的に挨拶をする者がいない。皆、よそよそしく礼をするくらいだ。彼らが何を話しているのか、聞いてみるのだが、彼らの言葉は同じ日本語でも、ジャックが大学時代から学んできたものとは随分違う、この地方特有の訛りと方言が混じっていて理解するのが難しい。分からない言葉があると百合子にいろいろと聞いてみて、徐々に理解するようにした。しかし、言葉が理解できても、保守的で閉鎖的な町のコミュニティに入るのは、ことさら難しい。ましてや自分は、背の高い白人のカナダ人だ。時には見た途端、驚いて遠ざかる輩にも出くわす。明らかによそ者、それも、ガイジンとして差別されている。

そして、ここに来て、もう一つ困ったことを体感することになった。それは来た時期が悪かったせいだともいえる。




夏の暑さと湿気である。ジャックの生まれ育ったモントリオールや大学時代から住むトロントとは大違いだ。冬は零下三十度まで下がるはるかに寒冷なモントリオールでも、夏は暑くなる。だが、こんなに苦しい暑さは体験したことがない。高温だけでなく日本ならではの湿気のせいだ。特にあわい町は海に面しているから余計だ。

すぐに汗だくになる。日本人なら慣れているのかもしれないが、ジャックには、このべたべたとした暑さは、耐えられるものではない。寒いのはめっぽう強いのだが、汗が出てはとまらないこの状態には我慢ならない。

そして、体に変な変化が起こった。腰回りに湿疹が出てきたのだ。真っ赤に腫れ上がり、かゆいうえ、かくと痛みがつらくてたまらない。一体どういうことなのか、泰蔵を元気づける前に、自分がひどい病気にかかってしまったようだ。

百合子に薦められ、電車に乗って、都市部の総合病院の皮膚科に行った。町の診療所に行くと、そこでしっかり診て貰った方がいいといわれたのだ。軟膏などで一時的に抑えても、原因が何かを突き止めなければ、これは繰り返されるということだ。

そして、皮膚科の医師の診察の結果が出た。
「ラテックス・アレルギー、つまり、ゴム・アレルギーですね」と医師は言った。
「ラテックス、ゴムって、どうしてそんなアレルギーに私はかかったのですか」
とジャックが訊くと、
「着られているパンツのせいですよ、パンツを腰から落とさないようにするためのゴムバンドが原因ですね。湿気の強い日本の夏のせいで、いつも以上に汗が出たのでゴム物質が、汗によって溶け出し、体に染みこんだせいでしょう。それでアレルギー反応が出たのです。ゴムパンツをはいている限り、この症状はよくなりません」
「そんな、パンツを履くなってこと? Oh, no!」とジャックは驚いた。ノーパンで過ごせというのか。しかし、これは男としては心地のいいものではない。股の間にぶら下がったものを常にぶらぶらとさせた状態にする感覚は、身がしまらない。また、勃起した時にズボンから突き出た状態にならないための抑えが必要で、そのためにもパンツは普段は身につけてないと心地悪いのだ。

「パンツが駄目なら、これを履いてみてはいかがですか、同じ症状の患者さんに必ず薦めているものがあります」
と医師が白い布きれを取りだし見せた。
「THIS IS FUNDOSHI!」と医師はジャックに言った。

第2章へ続く。

この小説の著作権は、このブログの管理者であり著者の海形将志に帰属します。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

和装 | 17:02:37 | Trackback(0) | Comments(0)
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