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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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原発問題を考える小説: 記憶 第4章 レリーフ
原発に関する深刻な問題を問いかける。軽小説スタイルで。

まずは第1章から第3章をお読みください。


石版に情報やメッセージを彫り込むというのは、古代から人類に受け継がれ、最も原始的でありながら、もっとも確実に伝承のできる手段といえる。現代では、コンピュータを使いデータをディスク上に埋め込むのが最も最新の情報保存手段だが、これは電気がない限りできない。また、機械が壊れてしまえば、再生して読み込むことは不可能だ。精密機械は管理をどんなに徹底しても数十年としかもたないものであることは実証済みだ。何とかデータがディスクや機械が劣化する前に、新しいものに移し替えないと再生不能な状態になり記憶が消え去ってしまう。少ないスペースで多量な情報を保存でき、検索機能なので自在に情報を取りだし読み込める機能を持った最新鋭の媒体だが、長期の保存という観点では実に脆いものだ。

電子データより確実な方法というと、紙やフィルムである。それならば、手にとってすぐに情報が読めたり見たりすることができる。だが、これも劣化していき、判読不明な状態になる媒体だ。そんな柔らかいものに比べ、重く硬い石版は、彫り込めば、それがそのままの状態でかなりの長い時間、情報を保存できる。古代文明の足跡は、ほぼ石版を読んで多くの場合知り得ている。
なので、この文明の人は、そのことを考え、写真を正確にレリーフ化する技術を発明し、後世に伝える手段を取ったのだろう。

その壁面、何枚かの写真レリーフが連なって彫り込まれているようだ。場面が移り変わり物語のようになっている。まずは、子供たちが手をつないで遊んでいる様子。実に楽しそうだ。服装や外見は今と変わりない。人種は、色が分からないので特定できない。顔付きの特徴からすると、やや浅黒い有色人種のような感じがするが、白人ということもあり得る。いずれにせよ、人類であることは間違いない。森の中で歌ったり踊ったりしている感じがする。
そして、街の通りの様子。暗い夜に灯りが灯った状態を写している。テレビを観ている人々。コンピュータらしきものを扱う人々の姿。工場で機械を動かす人々の姿。どうやら電気を使って生活していることがうかがい知れる。実に高度な文明だ。その高度な文明と共にとても豊かな生活をしていたことを伝えているらしい。
「すごいぞ、すごいぞ。まさにオーパーツだ。かつて、現代に匹敵する高度な文明が古代に存在したんだ」と興奮気味のインディ。

リヒャルトは、インディと同様に興奮を感じていたが、同時に思った。そんな文明がなぜ、現代まで続かず消えて、こんな遺跡として発見されているのか。古代から現代の間、いや古代から我々の知りうる有史の始まりまでの間に何が起こったというのか。

すると、その次の写真レリーフに目が留まった。これは火山の噴火か。大きな煙の柱が立っている。その下に岩のようなもの。はあ、この辺りに火山はあったかな。どんな火山かと思い、煙の元である写真の下の方を見ると、それは火山にしては、形が変だ。山にしては形が人工的なような。山形というより、幾何学的な台形に近いような。となると、何か人口の建造物。それが大爆発を起こした?

そして、その隣の写真を見る。驚きの写真だ。苦しむ人々の表情。最初に見た子供たちとはうって変わって重い病気にかかったような子供たちの表情だ。実に苦しそうだ。子供以外に、大人の病人も移っている。そして、その子供や大人を看ながら涙する人々。何が起こったのか。その爆発が影響したかのような印象を与える。
「きっと火山爆発で被害を受けた人々なんだ」とインディ。
「でも、この辺りには火山はないと思うが」とリヒャルト。
「かつてはあったのだろう。もう死火山となって地中に埋もれたのかもしれない」
「そうか、それは考えられるが、この病人たち、火山の影響という割には、怪我はしてなく、何か病気にかかったように見えるんだが」
レリーフから見る限り、怪我人というより、内臓をやられた病人のように見える。
「火山から有毒ガスが撒かれ、やられたんだよ。きっと」
「そうか、それなら説明はつくな」
「うわあ」とクルーの叫び声が聞こえた。



「何だ?」とインディがきくと、クルーはそこで何かを見つけたらしい。
「これです。これを見てください」
ガラスケースのようなものに何かが入っている。灯りをそこに向け照らし、はっきりと姿を映し出すと。博物館でみられるようなガラスのショーケースに、赤ん坊らしき体が横たわっていた。人形や作り物ではない。本物だ。だが、その赤ん坊、どこかが変だ。片腕がない。それに足が曲がっている。目が3つある。奇形児か。よくよく近付いてみると。それが剥製ミイラであることをインディが見分けた。
「見てください。他にも」
赤ん坊に限らず、山羊のような家畜の奇形の剥製ミイラがある。頭が二つに割れていたり、角が3つあったりと。魚に鶏なども。えらや足が多かったり少なかったり。

奇形の乳児と動物の剥製ミイラ。どうして、そんなものを置いているのか。どうして、そんなものを見せつけているのか。こんな奇形が発生したことを伝えたいのか。人体に影響を与えるとても深刻な事態が起こったということではないのか。こういう類の奇形は遺伝子レベルで起こる。単なる毒物中毒だけでは考えられない。
「これは、お墓なのだろう。いわば、奇形で社会に受け入れられることのない子供や食料にならない動植物をここに慰めのため葬ったのだろう」とインディ。
「しかし、どうして、こんな奇形が発生したんだ?」
「奇形児はいつの時代でも存在する。人口のある一定の割合で、動物でもそうだろう。ここに葬られているのは、少ない確率で不幸にもそうなったものを集めて葬ったのさ。ただ、それだけのことだろう」
「でも、あえて剥製やミイラにする必要なんてあったのか」
「もしかして、珍しく標本にしたのかもな。いい趣味ではないが」
そんなに単純なものだろうか。ここに敢えて、こんなものを置くとは、それなりに意味があってしかるべきだと思うが。
奇形が発生する病気とかが発生したというのではないだろうか。普通、奇形が出るというと、化学物質がばらまかれ、それが人体に入り、妊婦などが取り込むと、それにより胎児の体に影響が及ぶといった場合だ。ベトナム戦争での枯れ葉剤散布や、現代でも問題になる農薬、水銀、医薬品の副作用などが考えられる。それ以外に考えられるのは、、、
「おい、もう一つ部屋があるみたいだぞ」とインディが叫ぶ。
今度は分かりやすくドアがある。そのドアは鋼鉄か鉛のようなものでできていた。頑丈そうで、その上、錆び付いているが開けられそうだ。ハンマーで叩く。十分後。鋼鉄のドアが開いた。

中に入る。わ、足を踏み入れるとまず見えたのが床に白い布のようなものが散乱している光景だ。何だ? 灯りを照らして見る。手袋をした手で白い布をつかみ、採り上げる。あ、これは、とリヒャルトは思った。見覚えのあるものだ。それもごく最近の記憶である。

「おう、これは宇宙服ではないのか」とインディが叫んだ。


最終章へつづく。
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

原発 | 21:47:30 | Trackback(0) | Comments(0)
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