■プロフィール

海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

■最近の記事
■最近のコメント

■最近のトラックバック

■月別アーカイブ
■カテゴリー
■ブロとも申請フォーム
■ブログ内検索

■RSSフィード
■リンク
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
社会教訓小説2: ふれあい商店街 第4章 社長の過去
失われた地域コミュニティが問いかけるものとは。

まずは第1章から第3章をお読み下さい。

突然の異動、実質上の左遷である。給料は変わらないが、倉庫管理に移れだなんて明らかに自分に辞めてくれと会社が言ってきてるようなもんじゃないか。

原因ははっきりしている。あの老婆のことだ。あの呆けたお婆さんが、社長にあんなことをしなければ、こんなことには。むしろ、企画は受けてうまくいっていたはずなのに。

しかし、あのお婆さんはなぜ、あんなことを。突然、社長を自分の昔馴染みの人のように話しかけてきて。どう考えても社長とは年の違いからして、知り合いであるはずがない。社長は、ずっとアメリカにいた人だ。それに言っていたことが変だ。「死んでいたと思っていた」と。どういうことなのだろう。それに「岡ちゃん」と呼ぶのが気になる。岡村の「岡」なのか。単なる偶然だろうか。

だけど、同時に気になるのは、社長の反応だ。なぜ、あのことで私を左遷に。あんなふうに絡まれたら、誰だって起こるのは無理ないが、だけど、所詮はボケた婆さんのしたことだ。いくらなんでも、企画を潰して、私を罰しなくても。気分を害したということは分かるが、自分と新ブランドの企画とはまったく関係のないことだ。

だから、何かあるはずと思える。真知子は、それが気になった。

そんなある日、真知子は、老婆と関連のある人物と出会った。たまたま駅前の道を歩いていた。老婆の嫁か娘に当たる中年女性だ。以前、会ったことがある。

真知子は声をかけた。
「すみません。以前、ウォーリーでお会いしたことがあるの思うのですが」
中年女性は「はあ」と最初は分からないような反応だったが、真知子が老婆のことを話すと。
「ああ、ウォーリーの方。本当にこの度は申し訳ございません。姑である母が、とんでもないことをしでかしたようで」と申し訳ないような表情になって返した。
「実をいうと、そのことで気になることがありまして、どうしても、そのお母様とお会いしたいと思っているのですけど、駄目でしょうか。私、そうでないと納得いかないことがありまして」
と真知子。自分が異動命令を受けた事情を話すと、女性は、少し考え込んだ後、
「まあ、あのようにボケてしまっていますけど、御迷惑おかけしたことですし、いいですよ。会ってお話をするぐらいなら」と答えた。


老婆の住む家は、ウォーリーの1号店から歩いて五分程度のところだった。老婆は息子夫婦とその孫二人と住んでいる。真知子は居間に案内された。特に広くもない普通の家である。息子さんは、ただのサラリーマンである。

白髪の老婆が嫁に付き添われ現われた。何気なく礼をする。真知子のことなど忘れてしまっている様子だ。
「こんにちは。お婆さん、どうしても聞きたいことがあるので来ました。お婆さん、岡ちゃんって誰のことですか?」
「岡ちゃん?」とお婆さんが聞かれると、突然、目から涙をこぼした。真知子は仰天した。
老婆は泣きながら言う。
「岡ちゃんは死んでしまったのよ。死んじゃったのよ」ぼとぼとと涙を流す。とんでもないことを言ってしまったか。でも、きかないと。
「岡ちゃんって、岡村という名前の人?」
だが、老婆は、ひたすら泣きやまない。どうしたらいいのか。こんなんじゃあ、たまったものじゃない。全く、人を困らせるお婆さんだ。すると、
「岡村屋の死んだ亭主のことですよ」と突然、居間に中年男性が現われ言った。
誰かと思うと、その老婆の息子であった。老婆が嫁に付き添われ、居間を出ていき、息子さんと二人きりになって、話を続けた。
「ごめんなさいね。とんでもないことをしてしまったようで。昔のことと今のことを混同してしまうのですよ。痴呆症でね」
と真知子を見ながらすまなそうな表情で話す。
「それよりも、その岡村屋の亭主っということですが、それについて詳しくお話いただけますか」
「ああ、随分前ですかね。私が、まだ若かった頃にあったお店ですよ。ちょうど、ウォーリーマートのあるところにあった商店街にあった店ですよ。小さな雑貨屋だったかな。私の母がよく通っていましたよ。私もよく、いろんなものを買いに行ったかな。文房具とか、おもちゃとか。だけど、お店が潰れて・・・」
男性の表情が硬くなった。老婆と同じように、やや悲しげに。何かありそうだ。
「教えて下さい。どういういきさつがあったのですか、私どうしても知りたいのです。そうでないと、納得いきません。お婆さんのせいで、私、とんでもない目に遭わされているのです」
と真知子は必死に迫った。すると男性は、
「亭主の岡村さん、自殺したのですよ。店の経営が行き詰った上、抱えた借金を苦にしてね」
「え」と真知子はぞっとした。自殺した人?
「商店街はウォーリーマートが出来て、急に衰退してね。どんどん店が閉まりシャッター街のようになったのだけど、何とか岡村さんは町の人のためにも店を維持しようと頑張っていたんだが、ウォーリーに客を取られるばかりだったしね。ついには借金をしてでも店を持たせようと、でも、結局のところ、誰も店にはこなくなって。ついには商店街の土地もウォーリーに取られて、そこはウォーリーの社屋にされちまったのかな」
つまり、拡張フロアのあった場所には、老婆が言うとおり、商店街が存在したということ。となると、あの時の反応はそれなりのつじつまが合うとことになる。
「その岡村って、どんな人だったんですか。もう亡くなられたとお聞きしたのですが、写真とかありますでしょうか」と切り出した。
「ああ、古いアルバムにあるはずですよ。昔、商店街が主催したお祭りで撮った記念写真に岡村の亭主が写っているはずだ」
男性は、戸棚から古いアルバムを取り出し、開いて見せた。色褪せて数十年前に撮ったことが分かる写真である。商店街らしい光景。御神輿を前に鉢巻きに法被を身につけた人々が並んでいる姿。その中に見覚えのある顔を見つけた。鉢巻きに「岡村屋」と書かれている。岡村屋の亭主であることを表している。岡村社長にそっくりの顔だ。これでは見間違う。

だけど、もう死んだ人だ。それに生きていたとしても老婆と同じぐらいの年になっているはず。なのに、どうして、こんなにも岡村社長は死んだ亭主に似ているのか。だが、その理由もすぐに分かった。亭主のそばに立っているもう一人の人物。亭主の息子らしい少年。顔つきがそっくりだ。同じく「岡村屋」の鉢巻きをしている。なんということだ。

「懐かしい写真だね。この人が亡くなって。せがれさん、どこに行ったのだろうね。御家族もつらかったんだろう。私も死の知らせを聞いて悲しかったよ。だけど、母はもっと悲しんだよ。先代からの付き合いがあったからね。今では、当時の面影さえすっかりなくなったよ、この町は。商店街が潰れて、その後に、マンションとかどんどん建ってね。知らない人ばかり住むようになって味気なくなったね。本当に悲しいよ」

岡村社長は自分の家族が経営する店を潰し、父親を自殺にまで追いやった米国系大型小売店舗チェーン、ウォーリーマートの日本支社の社長をしているということか。でも、どうして?

普通に考えれば復讐のため? だけど、岡村社長は業界では、やり手のビジネスマンだ。業界のルールにどっぷりつかり、キャリアを積み上げてきた人が、業界最大手のウォーリーマートに入って復讐をする? そりゃあ、敵の懐に入ってこそ、復讐は成し遂げられるというものだが、だけど、普通に考えれば、自分の父親を自殺に追い込んだ業界などに最初から入りたいとさえ思わないと思うのだが。

真知子は、その疑問に対する答えをあるアメリカ人女性との出会いで知ることになった。

彼女の名はグレン・フィールドマン女史。アメリカの消費者運動活動家という。出会ったのは、新社屋付近で新店舗開店の反対運動をしている昭和商店街の人々の集会でだ。

第5章につづく
スポンサーサイト

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 13:47:02 | Trackback(0) | Comments(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。