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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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社会教訓小説2: ふれあい商店街 第6章 パパママ・ストア・ブランド
失われた地域コミュニティが問いかけるものとは。

まずは第1章から第5章をお読み下さい。

集会の後、真知子は、町内会の役員の方々、フィールドマンと話し合い、自らのプランを説明、フィールドマンから、それを元にした助言も受け、対抗プランを構築していった。

その翌日、真知子は会社に辞表を提出した。プランの実行に専念するためだ。そして、真知子は、そのプランを実行に移すため、元同僚にコンタクトを取った。商品開発部の元生産発注担当であった成瀬氏である。

成瀬氏は、真知子より十以上年上の男であり、体育会系のがっちりとしたタイプの人だった。企画された商品の生産委託先を選定し、価格の交渉を任されていた。利益を上げるためには、生産コストはできるだけ下げなければならない。委託先の工場にかけ合い、最低限まで受注価格を引き下げるように迫るのはかなりの重圧で、時に委託先業者と利益率を気にする上層部との間で板挟みになることもしばしばだった。ついには、重圧に耐えきれず転職をすることになった。今は、サラリーマンを辞め、自営でビジネスコンサルタント会社を運営している。

成瀬は真知子の退職を聞いて驚いた。その理由も話した。
「なるほどね。まあ、そんなものだろう。大手チェーンといえば、そういう仕組みなんだ。君も僕も、そんな仕組みの中に取り込まれていたというわけさ。だけど、どうして、僕に会いに来たのだ?」
「成瀬さんが必要なの。退職後の新しい事業展開で。骨格はできていて、関わる人たちからの合意はとりつけているわ。問題は、実行におけるサポートが欲しいの」
「新しい事業って?」
「商店街などの個人商店のためのプライベート・ブランドをつくるの。生産された商品は、大手チェーンではなく、個人で経営する零細な店のみに流通させる仕組みよ」
「え、そんなバカな。そんなこと出来っこない。したとしてもコストで大手にはかなわないぞ」
「コストで勝負するなんて考えていないわ。価格は高くてもかまわないの。売りは、安心、安全、アットホームよ」
「なんだ、そりゃあ?」と成瀬は驚く。
真知子は、内容を詳しく説明した。


昭和商店街の人々と再度の会合を持った。今度は、全国の他の地域から同じ問題や不安を持つ商店街の自治会役員の方たちも招待した。真知子の新事業に多大な関心を寄せていた。真知子は企画書を参加者一人一人に配布した。表題は「NPO「ふれあい商店街」の設立趣意」であった。

「私が考えているウォーリーマートに対抗するプランとは、ウォーリーブランドに対抗する商店街独自の商品ブランドを立ち上げることです。これはプライベートブランドとか、ストアブランドといわれています。いわゆるメーカーが生産してメーカーのブランドをつけた商品が棚に並ぶ従来型とは違い、店舗が生産から販売までを手掛けるというシステムです。大手にとっては、それがコストを下げ利益をあげるメリットのためやっていますが、個人商店向けに同じことができないかと考えているのです。ただ、コストでは大手にはとてもではないですが、かないません。私たちは、代わりに安心と安全とアットホームさを売りにするのです」

真知子の説明はこうだ。

安心、安全といえば、巷でもいわれるように無添加、無農薬、有機栽培、天然酵母パン、低温殺菌牛乳、放射線検査済み、遺伝子組み換えでない、オーガニック・コットンなどの口に入れたり、体に触れたりしても問題のない食品や日用品が考えられる。また、持続可能さをテーマに使い捨てでない長持ちする商品なども売りだ。それは大手でも、消費者の志向に合わせ、やや高価格にした上で、そんな商品を売り出しているところも多数ある。

なので、アットホームというフレーズが付け加えられる。それは、身近で顔の見える人々が、その安心・安全を保障した商品を売っているということだ。アットホームなふれあいがあり、それは信頼につながる。みえない付加価値だ。

以下は、「ふれあい商店街」ブランド商品の特徴として挙げられる事柄。

*生産拠点は主に国内、生産場所、生産者氏名は明示するようにする。安い労働力を求めた海外委託はしない、国内生産は、輸送による炭素ガス排出が低いので環境にやさしいので、できるだけ国内生産、流通をする。

*ただ、海外からの材料の他、製品を輸入することもあり、その場合は、生産者の顔がしっかりと見えるように、国産同様に明示する。また、海外製品は主に「フェア・トレード」という発展途上国の地場産業及び雇用促進を目的とした事業と結び付けたものを主眼とする。もちろんのこと、安い労働力を求めた海外委託ではないので、日本国内では認められないような労働待遇や児童搾取などはしない。

*リサイクルの徹底。缶、瓶、紙パック、ペットボトルを使用後は、店に持ち帰れば、その分が返金される仕組みを採用。買い物客に対しレジ袋を出さない。買い物客自前か、それが無い場合は「ふれあい商店街」で独自の使い捨てでない買い物かごを提供する。

*健全なコミュニティの維持に努める。治安を監視して、自警団を組織。商店街周辺の地域の警備をする。子供が危ない目にあいそうになったら、かけこめる場所となる。地域の祭り、イベントを率先して企画。地域住民にも参加をさせる。市民運動を促進。住民に商品企画などにも参加させ強い絆を育てる。

*商店街を維持しながら、我々の町をどうしたいかを住民と共に議論する。欧州などをまねて、大手チェーン拒否運動をする。ウォーリーマートのような大手チェーン新店舗の開業に反対を唱え、開業されたとしても買わないと消費者である住民に宣言させ、宣言書に署名をさせ、署名簿を集める。

これらのことを、買い物に来る住民にチラシを配り、何度も集会やワークショップを開き説明した。署名もどんどん集めた。商店街の店主でなくとも、意外にも多くの人も同様の心配を抱えていたようだ。認知が広がっていった。

少々買い物に便利な生活ができるようになっても、我々の住むコミュニティ、社会はどうなっていくのか。商店街で当たり前だった日々の人と人とのふれあいが消えてしまうのか。それに不安を感じる人が増えていっているのも現実だ。メディアなども取り上げ、思わぬ反響をもたらし、全国に「ふれあい商店街」運動が広まっていった。

その間に、販売する商品ラインアップも完成、そして、生産へと移ることになった。もうすぐで本格的に「ふれあい商店街」ブランドを販売できる。販売できるのは、個人商店主のみ。チェーン店は駄目だ。地域に根差した人々のみが売る資格を持つ。そんな店であるかを審査するのはNPO「ふれあい商店街」で、提供する商品の生産と品質保証も行う。NPO「ふれあい商店街」は、加盟店の全国の個人商店から、その事業を委託され、加盟料と商品の売り上げの一部を運営にあてる非営利団体だ。営利を目的としない。つまりは社会貢献事業という認識だ。加盟店にも、その意識を持ってもらうことが条件だ。

準備が整ってきた段階で、NPO「ふれあい商店街」は昭和商店街の自治会役員と共に、ある行動に出ることにした。

真知子が数カ月前まで務めていた社屋に向かい、署名簿を持ち込み、開業中止の申し出をすることにしたが、社の玄関前がやけに騒々しい。何が起こっているのか。メディアの記者がカメラやマイクを持って待ち構えている。

町内会長の男が携帯電話のテレビ放送を見て言った。

「おい、今、ニュースでウォーリーで買った過剰な農薬が入った野菜を食べて重体になって病院に運ばれた人がいたんだって。それに歯磨き粉にも、とんでもない化学物質が入っていて、また、洋服の繊維には発癌性物質、おもちゃの塗料にも有毒物質が入っていることが発覚して、今、急いで回収しているんだって。どうやらそのための記者会見が行われるらしい」

あまりの大騒ぎのため、訪問はとりあえず延期することになった。

翌日、それは新聞でより詳しく取り上げられたため、真知子はじっくりと記事を読んだ。問題の商品は、主に海外で生産されたものだ。安さを求め、海外の業者に丸投げで委託したため、業者はすこしでも利益を上げようと、安く手に入るまがいものを使用していたのだ。また、労働者を過酷な環境で働かせ、その結果、疲労、怠慢が生じ、または、雇用主に対する反感から損壊をもたらそうとそのような物質が生産工場でひそかに使われていた可能性も指摘された。そのような事態に気づかず次から次へと商品を販売したがため、こんな事件が相次ぐ結果となった。回収費用だけで膨大で、その他、賠償費用も今後予想される。ウォーリーマートはとんでもない経営危機に陥っていくことが確実となった。

そして、新本店社屋に予定されていた新店舗の建設と開業は中止され無期延期。実質的には廃案となった。

最終章へつづく
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テーマ:ライトノベル - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 18:06:21 | Trackback(0) | Comments(0)
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