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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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社会教訓小説2: ふれあい商店街 最終章 取り戻すべき失われしもの
失われた地域コミュニティが問いかけるものとは。

まずは第1章から第6章をお読み下さい。

地域コミュニティに貢献することを信条にかかげた個人商店主のみが販売されることが許されるプライベート・ブランド「ふれあい商店街」の発売日となった。そして、それは昭和商店街で最初のお披露目となった。同時に商店街も「昭和ふれあい商店街」と改名された。NPO「ふれあい商店街」もここに拠点を置く。地元の人々はもちろんのこと、メディアの取材も多数訪れ大盛況だった。

価格は、大手のスーパーなどに比べ割高であるが、安心と安全、そして、地域に密着した存在であるアットホームをキャッチフレーズに、多くの人々が興味を示している。この昭和ふれあい商店街だけでなく、全国に展開する予定もしっかり立てている。

安くて品ぞろえが豊富であればいいという考えでは駄目だということに多くの消費者が気付き始めた。特にウォーリーマートの商品の様々なスキャンダルは、多くの消費者に衝撃を与えた。利益を追求するあまり、まがいものばかりが売られていたということだ。顔のない生産者の商品を顔のない販売者が売る。消費者は、生産者と販売者にとっては顔のない存在。互いに気にかけない者同士だ。その結果が、商品の安全性に対しての関心さえも薄めてしまった。

気がつくと、信用できる商品も販売者も存在しなくなってしまった気がする。町には、誰とも知らない人々ばかりが集い、味気ない空間になっている。それがチェーン店やフランチャイズ店の進出により、全国に広がったのだ。

ならば、かつてあった人々が何気なくふれあえる商店街をとり戻そうではないか。だけど、ただのセンチメンタリズムに浸っては駄目だ。大手チェーンにはつくれない付加価値がなければ、取り戻すことなどできない。それが、プライベート・ブランドだ。相手に対抗する手段として、相手が使う技を逆手に利用したのだ。だが、こちらは彼らとは違う目的で使う。彼らとははっきりとした違いを見せるための目的だ。

真知子は、商店街の通りで人々に声をかけたり、パンフレットを配ったりとある種のキャンペーン・ガールに扮した。反応は上々だ。商品もどんどん売れている。これをただのブームに終わらせてはいけないと思った。この商店街も、一つ間違えば、あの岡村屋のように、と思うと見を引き締めないとと思った。とりあえず、一難は去った感じだ。予定されていたウォーリーマートの新店舗建設が中止になってほっとした。数ヶ月前の自分なら、全く逆の立場だった。それもこれも、あの岡村屋の話を聞いたからだ。あんな悲劇を起こしてまで、利益を追求しなければいけないものだろうか。ほんの些細な目先の利益を。

気がつけば、手にした利益以上の損失を被ることにもなるというのに。

真知子は、一休みをするため、事務所に戻った。座って冷たいお茶を飲みながらテレビでお昼のニュースを見た。それは、真知子にとってはかつての大ボス岡村社長の辞任会見であった。就任して数か月であったが、責任は逃れられないと判断したためだという。会見で岡村が自らの辞任について話を始めた。生中継だ。


「皆さま、この度はこのような不祥事を起こし、多くの人々にご迷惑をおかけしてしまったことを心より深くお詫び申し上げます。私は、長年、ウォーリーマートでキャリアを積み、日本でも大いなる流通革命を起こしていくことを目標としてきました。しかし、ここで壁にぶつかってしまいました。今までがむしゃらに突き進んできたことに限界を感じたのです」

突然、社長の目から涙がこぼれた。

「その限界とは、実を言いますと、私自身の中にありました。私ごとで差し出がましいですが、私はウォーリーマートが最初に日本で店を出した町の商店街の店主の息子として生まれました。ウォーリーマートが進出したせいで、私の一家の商店は倒産の危機に追いやられました。その結果、父は借金を苦に自ら命を絶ちました。私は、その時、父が悪いと思っていました。非効率な流通と運営で、商品を売ってきたやり方が通用しなくなったのに、昔ながらのやり方にこだわり過ぎた結果があのようになったと。だからこそ、ウォーリーマートに入り、かつての悲劇を繰り返すべきではないと思い効率的でより利益を生む流通・販売を実現しようと、それこそが結果、消費者を喜ばせ、社会に貢献できるものだと。だけど、この有様です。なぜ、このようになったのか振り返って考えてみると、かつて私が育ったところが思い浮かんできました。そこにあったもの。それは利益や効率以上のものでした。人々とのふれあいです。互いの顔がしっかりと見えるふれあい。だから、安心して商品が買える。ものが買えるだけでなく、何気ない人との交流ができる。その交流のおかげで安心して住めるコミュニティが維持できていた。お金だけでないものを互いに分かち合っていたのです。そんな雰囲気があったのです。それを何の価値もないものと思い過ぎ、ただ、利益を追求していけばいいのだという考えばかりに支配されていました。

今、私は忘れていたものを思い出させる機会にめぐり合いました。そして、私は、それを取り戻すための旅に出たいと思います。それは、私だけでなく、この世界に生きる誰もが取り戻さなければいけないものだと思います」

真知子は、社長と同様に目から涙をこぼしながら、会見の中継を見た。すると、後ろから
「真知子さん、御客さんがどっと来て大変よ。一緒に手伝って」と自治会役員のおばさんが声をかけた。真知子は、手で涙をぬぐい立ちあがって、通りにくり出した。

終わり
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テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 15:06:22 | Trackback(0) | Comments(0)
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