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海形将志

Author:海形将志
40代、独身、東京在住。仕事は翻訳業。米留学経験有り。

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日本昔話的小説: 雪のように白い肌の女 第1章 スキー旅行
これからお届けするのは、私がスキーをするために行った長野県信濃大町駅から、帰る列車の中で旅行を振り返りながら考え付いた小説です。軽小説スタイルでお届けいたします。

松本亮は、久々の休暇となり、とてもリラックスした気分であった。亮は、フリーランスの翻訳者だ。主に技術系の翻訳を請け負っている。言語は英語が主だが、ドイツ語、フランス語、ロシア語もできる。数年前までは翻訳会社に勤務していたものの、自分で仕事を直接請け負い、直接報酬を受け、自由に時間の使えるフリーの立場で仕事をした方が、より高い報酬が得られ、マイペースな過ごし方ができると考えたからだ。翻訳は亮にはもってこいの技能であった。元から外国映画が好きだったことから、語学に親しめ、学生時代、何度か語学留学もした。それ以外に語学にとって都合のいいある特殊な能力が亮にはあった。そのことは亮だけの秘密であるが。

歳は31。東京の新宿のオフィスを兼ねた自宅に住んでいる。独り身であるが、それが仕事と同様に何よりも自由できままなスタイルであると考えていた。ところが、最近、その考え方を変える出来事があった。ある女性に出会ったことからだ。名前は伊代という。歳は31歳。同い年なのに小柄で幼顔なため、子供っぽい感じを受けるが、それでもフリーの記者として活躍している。1年前、取材原稿の翻訳を依頼されたことがきっかけで知り合った。

プライベートでつきあい始め、伊代の見かけによらない気丈さを知り、次第に惹かれていった。彼女も自分に惹かれていっている感じがした。もっとも、亮は奥手で、昨今言われる草食系男子の典型だ。彼女との付き合いは、男女の付き合いであるとはいえ、言葉を交わす程度がほとんどだ。まだ、手をつないだことさえない。

それでも、亮は自覚している。伊代が好きだ。そして、彼女に結婚を申し込みたい。そのことを前提に、これからつきあっていきたいと彼女に伝えたい。今や、そんな時期が来たと考え、思い切って彼女を旅行に誘うことにした。今まで、何度もデートをしたことはあるが、泊の旅行は初めてだ。なので、断られないか心配であったが、彼女は誘われたことをとても喜んだ。

旅行先は、亮が冬になったら必ずスキーに行く長野県は鹿島槍スキー場だ。信州大町にあり、スキー場からは日本百名山の一つに数えられる鹿島槍ヶ岳が眺められる。けっして大きなスキー場ではないが、コースがバリエーションに富み、数日ぐらいスキーを楽しめる場所だ。

伊代にとってスキーは生まれて初めての体験だという。彼女は南国の沖縄出身で、東京に移り住んだのは高校を卒業してフリーの記者になり福岡や大阪など西日本を転々とした後、数年前からだ。中学生の頃から、スキーを始めた亮と違い雪国というのには全く馴染みがない。特に寒いところは苦手だという。

そんな彼女でも、スキー旅行を承知してくれた。亮と一緒に旅行にいけることをそれほどまでに喜んでくれているという意味ではないかと思った。

二人は、新宿から特急あずさに乗り、信州大町駅まで行った。そこから、バスで45分ほどのところに鹿島槍スキー場がある。シーズンの度に必ず行く。他にも新潟県のかぐら、岩手県の雫石、群馬県の丸沼、北海道のニセコなどに行くが、ここは毎シーズン、必ず逃さず行くところ。初めて、中学生の時、家族旅行で行って以来、毎冬、訪れている。なぜだか逃さずいくところだ。

列車の旅は3時間に及んだ。朝7時からなので、乗り込むと眠りこけてしまった。というのも、前日まで1週間、連続で緊張しっぱなしの日々だったからだ。というのも、1週間前、とある独立行政法人の職員が亮の住まい兼オフィスを訪ね、とても高額な報酬を提示して仕事を依頼してきた。とても難解な技術文書、それも大量で通常なら1カ月を要する量の文書の翻訳を亮に依頼してきた。言語は英語、ドイツ語、フランス語だ。亮は、これでも通常の数倍のスピードで翻訳ができる男だ。それを売り物に、数多くの企業や政府機関から短期の大量注文をこなしてきた。

だが、今回受けたものは、これまでに比べ、かなり難度が高く、分量も1週間という期間では間に合わないほどであった。断るべきかと思ったが、とてもつもなく高額な報酬である。即金で払うという。1週間で1年間遊んで暮らせるほどの報酬がゲットできるとあれば断る理由がない。ただ、機密性の高い内容であるので、依頼する法人の事務所でするよう命じられた。場所は同じ新宿にあるので承知した。そんなことは珍しいことではない。仕事は警備員が外に常時張り付くオフィスビルの一室であった。朝から夜遅くまで缶詰状態である。休憩さえろくに取れない。それほどまでに難解で量が多く、期限切れを迫られる作業なのだ。

だが、何とかこなし終えた。終わって無事、納品したが、もちろんのこと、内容は一切、外部に漏らさないこと。これは、どんな依頼人に対しても当たり前のポリシー。

何であれ、仕事を終え大金を得た。次の仕事も控えているが、それを始めるまで数日ほどの休みが取れる。なので、伊代を誘い旅に出ることにしたのだ。彼女にプロポーズするための。

「ねえ、着いたわよ」という伊代の声に起こされた。


駅を出た後、駅前のバス停でバスを待つことにする。外は東京に比べかなり冷え込んでいた。雪もどっぷり積っている。

亮はスキー道具を持ちながら立ち、伊代はスキー場でスキー道具をレンタルをする手筈となっている。バスが来る時間まで三十分ほど待たなければいけない。道具を駅舎の待合室に置き、近くの御土産屋にでも立ち寄ることにした。亮は、これまで来るたびにそうしている。

すると御土産屋のそばに「信濃大町PRハウス」という建物があるのに気付いた。昨年はなかったが、観光PRのために新しくできたところのようだ。御土産屋に入る前に、そこを見ていこうということになった。中では、地元の特産品の紹介の他、鹿島槍ヶ岳の絶景の写真、山に住む猿やカモシカの写真などが展示されていた。どこにでもある観光客向けの観光PR展示物といった感じだ。暇つぶしにしても物足りない感じがする。数分ぐらいあれば十分だ。

「ねえ、ここって雪女の発祥の地だったの」と伊代が言った。一つの展示物を指差した。
snowwoman

「雪女?」亮は興味深く、その展示物を見つめた。模型で山小屋が作られ白い装束を着て白い肌に白い髪の毛をした雪女の人形があり、男二人の人形と対面している。男の一人は凍りつき、もう一人は自分も同じ目に遭いそうでおののいている様子だ。模型のそばに「雪女」の物語が書かれたボードが立てかけられていた。

「昔、昔、鹿島槍ヶ岳の麓に茂作と美濃吉という猟師がいた。二人はある晩、森の中で吹雪に遭い、山小屋に逃げ込んだが、そこで雪女に出くわした。雪女は茂作に息を吹き凍らして殺すと、美濃吉に近付いた。殺されると思いきや、「お前のことが好きになったから殺さないでやろう。しかし、今晩起こったことは誰にも話してはならぬ、話せば、そのことが分かりお前を殺しに行く」と告げ、その場を去った。その後、美濃吉は、ある日、お雪という名の美しい女性に出会い、恋をして嫁にすることとした。二人の間には子供ができ、幸せな日々を送ることになった。そして、ある雪の日、お雪を見て美濃吉は、山小屋での出来事を思い出し、それをお雪に話した。すると、お雪は自分が雪女だと言い、約束を破ったから殺さねばならぬが、もうあなたとの間には子供がいる。なので、殺せないので私は姿を消すと言い、美濃吉と子供の前から姿を消してしまった。」
 
「へええ、ここが、この物語の発祥の地だったのか」と亮。
「有名な話よね」
「僕は、子供の頃からこの話が好きでね。スキーに行くたびに思い出すんだ。だって雪を見に行くのだから。しかし、毎年ここに来ていながら、今、初めて知ったな。ここが、雪女、発祥の地だってこと」
「私は寒いのは嫌いなのよ。だけど、あなたが是非ともっていうから来たのよ」と伊代。
「はは、僕も寒いのは嫌いさ。だけど、雪とその上を滑るスキーが大好きなのさ」

御土産屋により、温かい飲み物とスナック菓子を買った。その後、バス停へ。二人を乗せたバスは鹿島槍スキー場へ向かった。

第2章へつづく
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テーマ:ミステリ - ジャンル:小説・文学

軽小説 | 13:45:20 | Trackback(0) | Comments(0)
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